サーバントリーダシップ(01)はじめに

サーバントリーダーシップサーバントリーダーシップという考え方が浸透し始めています。

直訳では、「奉仕型リーダーシップ」、そしてそれを行う人を

サーバントリーダー、「奉仕型リーダー」と呼んでいます。

カタカナでも、直訳でも少し判りづらいところがあります。

このサーバーントリーダーの特徴、属性をまとめたものがあります。

これについて解説を加えていきます。

サーバントリーダーとして、10の特徴が挙げられています。

1.傾聴  Listening

2.共感  Empathy

3.癒し  Healing

4.気づき  Awareness

5.説得  Persuasion

6.概念化 Conceptualization

7.先見力・予見力 Forsight

8.執事役  Stewardship

9.人々の成長に関わる  Commitment to growth of people

10.コミュニティづくり  Building community

さて、これだけでは要約されすぎています。

一つ一つ見ていきましょう。

サーバントリーダシップ(02)定義

サーバントリーダーシップサーバントリーダーの活動は、グリーンリーフセンターというNPO活動を中心に全世界で行われています。
日本にも支部があり、サーバントリーダーシップの定義が掲載されています。

サーバントリーダーシップとは

リーダーである人は、「まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」という実践哲学

サーバントリーダーは、
・相手に奉仕する人
・相手への奉仕を通じて相手を導きたいという気持ちになる
・その後リーダーとして相手を導く役割を受け入れる
・他者に対する思いやりの気持ち、奉仕の行動が最初に来る
・常に他者がいちばん必要としているものを提供しようと努める

日本語原文は、グリーンリーフセンターを参照して下さい。

サーバントリーダーに導かれた人は、どうなるのでしょう。

我欲にとらわれないで、賢く、自律的に、自らも奉仕者として成長するとされています。

非常に、道徳的な姿のようです。

グリーンリーフの著書の中でも触れられていますが、この姿は仏教の八正道のようです。

八正道を一部、要約して紹介します。

正見  正しくものごとを見る
正思  正しくものごとを考える
正業  正しい行いをする
正語  正しい言葉遣いをする
正命  自分の仕事が人の命に貢献する
正精進 正しい努力をする

仕事を通して、リーダーシップを発揮するのに、人の貢献をする動きとして正しくあるようにする。

これが、サーバントリーダーシップのようです。

さらに加えるならば、フォロワーに唯々諾々となるのがサーバントリーダーシップではありません。

リーダーが意識的に主導権を持って「私はこう行くから、ついてきてくれ」とはっきりと示すのが、サーバントリーダーシップです。

サーバントリーダシップ(03)傾聴

サーバントリーダーシップサーバントリーダーシップの普及活動を行っている、グリーンリーフセンターのスピアーズによる「サーバントリーダーの10属性」(サーバントリーダーシップ入門、サーバントリーダーシップに掲載)、

つまりはサーバントリーダーの10の特徴についてコメントしてゆきます。

まずは 傾聴

「あの人について行っても良い」と、部下・フォロワーから思われるリーダーとはどのようなリーダーでしょうか。

まずは、部下の話を「良く聞く」リーダーでしょう。
良く聞くという意味では、「聴く」を当てる方が良いでしょう。

自分の考えを押しつけるばかりではなく、まずは『聴く』ことができるリーダー、「自分の話していることを聴いてもらえている」ことが実感できるリーダー、これが「ついて行っても良い」と思われるリーダーです。

では、傾聴の力を磨くにはどうすれば良いでしょうか。

普段から傾聴しようと心がける、傾聴の技術を学ぶ、文献などで触れるなど、考えられます。

技術としては、

座り方
聴く姿勢
体の向け方
うなずき方
ペーシング
相づち

など、学んで使っていけば身につくものもあります。

そして何より「心の向け方」、相手への関心を持つことが傾聴力アップの鍵です。
相手への関心は、傾聴に限らず色々なところで出てきます。

NLPやTAがおわかりの方は、傾聴へと繋がるポイント、もっと気がつくとも思います。

聴くということは、、、、深いですね。

サーバントリーダシップ(04)共感

サーバントリーダーシップサーバントリーダーの10の特徴についてコメントしています。

2番目は、  共感  Empathy です。

共感 は広辞苑では、

他人の体験する感情や心的状態、あるいは人の主張などを、自分も全く同じように感じたり理解したりすること。同感。

empathy(エンパシー)には、似たような言葉があります。
シンパシー(sympathy)です。
どちらも、共感という訳語が当てられています。

細かく見ると、
エンパシーには、感情移入、共感
シンパシーには、同情、悔やみ、支持、共感
(ロングマン英和辞典)

少ししつこく見てみます。(コリンズコウビルド英英辞典)

empathy

Empathy is the ability to share another person’s feelings and emotions as if they were your own.

sympathy

If you have sympathy for someone who is in a bad situation, you are sorry for them, and show this in the way you behave towards them.
If you have sympathy with someone’s ideas or opinions, you agree with them.
If you take some action in sympathy with someone else, you do it in order to show that you support them.

今、『共感』 という日本語をエンパシーの訳語として使っています。

これは、「自分がその立場だったら、どう考えてどう行動するか」という 『自己移入』 の能力に他なりません。

なぜサーバントリーダーシップで、共感(自己移入)する能力が必要なのか。
それは、奉仕をする相手にとって何をして欲しいかがより判るようになるためです。

注意すべき点としては、共感と、同情、哀れみを混同しないことでしょう。
同情や哀れみは、自己移入ではなく相手を外から、もしくは上から見ている状態です。となります。
自己移入はしても、感情移入をしない(どう感じているかは判っても、感情移入しすぎない)ことが必要です。

自己移入の練習方法も様々あります。

面白いことに、共感の重要性は論語でも示されています。
当然と言うべきなのかもしれません。

サーバントリーダシップ(05)癒し

サーバントリーダーシップサーバントリーダーの10の特徴についてコメントしています。

3番目は、  癒し  Healing です。

癒し?リーダーシップに癒しとは、違和感があるかもしれません。

念のため、広辞苑で言葉の確認から始めてみましょう

癒す

病気や傷をなおす。飢えや心の悩みなどを解消する。

原語も確認してみましょう healで見てみます

heal
 When a broken bone or other injury heals, it becomes healthy and normal again.
 When someone’s emotional pain heals, they feel normal and happy again.
 If you heal something such as a rift or a wound, or if it heals, the situation is put right so that people are friendly or happy again.

 心身や関係性が傷ついたところを「ヒール」すると正常・元気・あるべき姿・幸せになる、といった意味になります。
 

さて、サーバントリーダーシップにおける「癒し」とは、

集団や組織の変革を進める上で力となるのは、ものごとがうまく進んでいない点、全体から見て「欠けている」ところを見つけてうまく行くように「手当て」する

ことを指します。

人のモチベーションであれば、モチベーションかもしれません。
役割への意識付けや業務量の増減かもしれません。

組織的に欠けている部分が見えれば、そこを「手当て」してうまく行くようにすることです。

Healing 癒し が、日本語では医療の専門用語として捉えられがちなので、手当て くらいが妥当だと考えています。

手当ての中には、例えば挫折感を持った部下の話を聞いたり元気づけたりすることで癒すことも含まれます。
いっしょにいるだけでほっとするといったことも含まれるでしょう。
癒しという言葉ですんなり腑に落ちる人は、癒しという言葉でご理解いただくのが良いでしょう。
TA(交流分析)で言うと、NPの状態を持っている人、ということになります。

うまくゆくように全体を見て手当てをする こと、これがサーバントリーダーシップの特徴の一つです。

自分が何か行ったり引っ張ったりするのではなく、全体を見てチーム・組織がうまくゆくようにする。
こういった動きです。

サーバントリーダシップ(06)気づき

サーバントリーダーシップサーバントリーダーの10の特徴についてコメントしています。

4番目は、  気づき  Awareness です。

様々な活動において、「気づき」が無いと行動はできません。

その中で、サーバントリーダー、奉仕型のリーダーの特徴として挙げられている「気づき」に触れます。

気づき まずは、広辞苑から

気が付く
・そのことに考えが及ぶ。気づく。
・細かなところまで配慮が行き届く。よく気がまわる。
・ぼんやりした状態、意識を失った状態から正気に返る。

aware  をコリンズで

・If you are aware of something, you know about it.
・If you are aware of something, you realize that it is present or is happening because you hear it, see it, smell it, or feel it.
・Someone who is aware notices what is happening around them or happening in the place where they live.

英語の方が、認知している、知覚しているといった意味が濃いですね。

さて、サーバントリーダーには、傾聴、共感、先見力といった特徴もあります。

良く傾聴すること、共感を持つこと、先見力・先見性を持つことは、何かに「気づく」ことが必要です。

そして、サーバントリーダーの気づきは、他人や周りに対する気づきに加えて、周りよりも「自分」や「自組織」に対する気づきを重要視しています。
自分に対する気づきを重ねるとどうなるでしょうか。
自分のこの行動はどうか (良いか悪いか、何にとって) ということに気がつき始めます。
そこで、倫理観や価値観まで意識するようになります。

では、気づきを高める方法とは、、、、、、
一つの、そして強力な方法として「今の行動に意識を向ける」という方法があります。
具体的に取り組むには、別の言い換えで理解したり、手順に沿った方が良いかもしれません。

これを意識し続けると、気づかなかったことに気づいている自分、、、、これに、それこそ気づくかもしれません。

何より、普段の職場や生活の中で「おや」と思うことが増えてくるのが自然かもしれません。

サーバントリーダシップ(07)説得

サーバントリーダーシップサーバントリーダーの10の特徴についてコメントしています。

5番目は、  説得 Persuasion です。

リーダーが説得をする場面、イメージしてみると、どうでしょうか。

説得でなく、「伝達」くらいなら良いのでしょうが、「言いっぱなし」ということもあるかもしれません。

説得 広辞苑で、

説得
・よく話して納得させること。

Persuasion の動詞 persuade

・If you persuade someone to do something, you cause them to do it by giving them good reasons for doing it.
・If something persuades someone to take a particular course of action, it causes them to take that course of action because it is a good reason for doing so.
・If you persuade someone that something is true, you say things that eventually make them believe that it is true.

真っ当な理由(わけ)を与えて動いてもらう、ような意味ですね。

さて、日本語の「説得」には、次のような似ている言葉があります。

 説く、説きつける、説き伏せる、口説く、言い込める

説く、以外の言葉、聞いても判ると思いますが、『言って従わせる』という意味が含まれます。

従わせる、つまり理屈や納得よりも服従に焦点が当たっています。

さて、自分が説得される身になってみて下さい。

真っ当な理由があって、「自分が動こう」と思い至ったならば、動きの質が良くなることでしょう。
熱心に動くとか、当事者意識を持って動く、などです。

説き伏せられた、強めの言葉にすると屈服して動いた場合、動きの質はどうでしょうか、、、、、同じような動きをしても、動きの質はかなりの場合落ちてしまうのではないでしょうか。

スピアーズによるコメントにおいても、「職位に付随する権限に依拠することなく、また、服従を強要することなく、他の人々を説得できる」と示しています。

奉仕・支援によるリーダーの動き、特に他人に動いてもらうようにする時には、説得を心がけるのが良いようです。

サーバントリーダシップ(08)概念化

サーバントリーダーシップサーバントリーダーの10の特徴についてコメントしています。

6番目は、  概念化 Conceptualization です。

リーダーが夢を語る。こうなりたいと語る場面を想像してみて下さい。

夢物語を語るのも夢を語る一つかもしれませんが、具体的に形づくられた意志や夢は、共感を得る目標として共有しやすいものになるでしょう。

概念  いつも通りで、広辞苑にて

概念
・事物の本質をとらえる思考の形式。事物の本質的な特徴とそれらの連関が概念の内容(内包)。概念は同一の本質をもつ一定範囲の事物(外延)に適用されるから一般性をもつ。
・大まかな意味内容。

概念とはなんぞやと言い始めると、哲学的なところなどなど深みにはまりそうです。

コリンズで確認してみます

conceptualization の動詞 conceptualize

conceptualize
If you conceptualize something, you form an idea of it in your mind.

考えを形づくること のような感じですね。

さて、サーバントリーダーの特徴は、何と言っても奉仕(サーブ)です。
とは言え、グリーンリーフは、まずは「自分はこう行くから、ついてきてくれ」(I will go,come with me)が先にあると言っています。

この「こう行くから」の「こう」の内容は、リーダーの思いや考えを表しています。
これが概念化です。概念化で難しければ、夢を語るなのですが実現しない夢物語の意を含んでしまいそうで危うく思えるのであれば、

 リーダーの『思いを形づくる』、思いを明確に語る くらいが良いかもしれません。

理解しやすい表現で理解するのが良いでしょう。

受け身で奉仕(サーブ)するのではなく、まずは「思い」があります。
そして、思いの方向に行こうよ、と呼びかけます。
さらに、みんなで行けるように良く聞き、良く対話するなど、形としては奉仕するような行動をとります。

思いを明確にしていますか?

伸びるような、よくなるような、希望が持てるような思い、ビジョンが見えると共に進みやすいでしょう。

サーバントリーダーシップ(09)先見力

サーバントリーダーシップサーバントリーダーの10の特徴についてコメントしています。

7番目は、先見力・予見力 Forsight です。

ちょっとした出来事でも、そこから何かを感じ取って問題の芽への対策を打つ。
広がる可能性を考える。

先見力・予見力  例によって広辞苑から

先見
事があらわれる前に見ぬくこと。さきを見通すこと。

予見
事がまだ現れない先に、推察によってその事を知ること。予知。

コリンズです。

foresight

Someone’s foresight is their ability to see what is likely to happen in the future and to take appropriate action.

何が起こるか察知して適切な手を打つ

予見+布石 英語の方が手を打つ行動まで含んでいます。

サーバントリーダーに限らず、リーダー・上の立つ人は自分の家族・組織を守って、社会で活躍できるような動きをします。そのために、先を読みます。

例えば、二宮尊徳は茄子の不出来から飢饉を先読みして、芋を植えさせました。二宮尊徳の指導で飢饉対策のできた地域では大飢饉をしのぐことができました。

サーバントリーダーの特徴の中には出てきませんが、先見力のために必須なスキルがあります。

それが、  観察   と 想像(妄想でも結構です) です。加えて、特徴の4番目の気づきでしょうか。

目で物体を捉えても、見逃していると観察にはなりません。
違いを感じて、想像・妄想を広げると先が見えてきます。

5分後の予見のように、5ヶ月後も予見してみる努力をする、と一歩でもサーバントリーダーに近づけるでしょう

サーバントリーダーシップ(10)執事役

サーバントリーダーシップサーバントリーダーの10の特徴についてコメントしています。

8番目は、執事役  Stewardship です。

ひつじ と間違うCMもありましたね。

さて、サーバントリーダーは、執事のような動きをする。もう少し見てみましょう。

広辞苑から

執事
・事務を執りしきる者。身分の高い人の家や寺社で、家政や事務を執行する人。
・官職の名。

ちょっと想像がつきづらいですね。

コリンズでは、

stewardship

Stewardship is the responsibility of looking after property.

財産や才能、広くは可能性など持っているものの面倒を見るという責任感や信頼感

といったところでしょう。

しつこくlook afterを見てみます。

look after

英和辞典では、世話をする、面倒を見る といった訳語となります。

コリンズでは、

If you look after someone or something, you do what is necessary to keep them healthy, safe, or in good condition.
If you look after something, you are responsible for it and deal with it or make sure it is all right, especially because it is your job to do so.

健全な良い状態を保つ、正当な扱いをする、その責任を持つ。といった感じです。

江戸時代の時代劇で見かけるような、良い商売をしている大店の番頭さん、といったイメージが湧きます。

番頭は、多くの場合、店を所有している訳ではありません。
店を切り盛りすることを、主人から任されています。

リーダーも、多くの場合自分のチームを所有している訳ではありません。
チームの運営を任されています。
オーナー社長であったとしても、社員の皆さんを所有している訳ではありません。
会社に所属していただく形で、社長は人の運営を含む会社の運営を任されています。

スピアーズの説明では、
大切なものを任せて信頼できると思われる人、という説明をしています。

(良いようにしてくれそうだと)任せて安心、だと思われる動きをすることがサーバントリーダーの特性のひとつです。