実践コミュニティ(07)実践への工夫

学習する組織の実践コミュニティについて解説しています。

実践コミュニティについては、エティエンヌ・ウェンガーなどが次のように定めています。

あるテーマに関する関心や問題、熱意などを共有し、その分野の知識や技能を、持続的な相互交流を通じて深めていく人々の集団

私なりに要約すると、「知恵の共有・伝承ができる集団」となります。

カタカナにはなりますが、ナレッジマネジメントに使える技術とも言えるでしょう。

技術や顧客環境の急激な推移、徒弟のような長いつき合いのできない仕事の体制、が進むとどうなるでしょうか。

落ち着いて後輩や他部署に自分の知恵を転移させようとせずに、自分だけ、自部署だけで仕事を完結しようとする傾向があらわれます。個々の能力や経験の総和は小さくなります。隣の部署のAさんに聞けば良かっただけなのに、調査や検証に1週間もかかったりしてしまうことになりまs。

こういった時に実は利他的に動けると実は自分や自組織が良くなるということは「利他性の経済学」でも触れられているところです。

自分が向上するために、ひいては自社自組織が向上するための仕掛けの一つが、実践コミュニティとなります。

コミュニティということは、集団で活動を長期間行うイメージです。活動が続くとどうなるでしょうか。
実践コミュニティが続くことで、お互いに学び合い高め合う「学習する組織」にもつながります。

さて、前回までで実践コミュニティの流れについて触れました。

今回は、実際に実践コミュニティを続ける時、意識して実践コミュニティを作り上げよう・やり続けようとする時のハードルについて取り挙げます。

私たちの実践などによる教訓です。

・長い目で見ることが必要

  「自分だけでよい」といった雰囲気から、「みんなで、自分も学び合おうよ」
   といった状況となるには、やはり時間が必要です。

・無理強いしても動かない(自分で見つかると動く)

  実践コミュニティを作るから参加しなさい、学習する組織を目指すので
  するようにしなさい、と言われてもまず動きません、動けません。
  自分の目の前の仕事や生活が重要となってしまいます。
  ではどうするか、自分で意欲のわく方向が自分から見つかるように工夫
  をすることが重要です。自分を見つめる振り返ることや、自分の得意分野
  を意識できる機会を上手に利用すると良いでしょう。
  実践コミュニティや学習する組織を構想・企図する人以外の実際の会社の
  皆さんには、活動したり集まったりする動機付け(言い訳)ができるような
  環境づくりをすると良いです。

・適切な支援

  実践コミュニティ、何か機会を与えれば全部自分で自動的にできてゆくモノ、
  ではありません。
  キャンプファイヤーで小さな火を自分で熾して大きくしてゆくことを考えて
  みて下さい。燃えやすいモノを集めて、着火します。火が付いたら「ふー、ふー」
  として広げます。そして種火を薪の方に移します。さらに、キャンプファイヤー
  になるように様々工夫します。
  実践コミュニティへの各人の火が付いた、と企画者が感じたならば、適時・適切に
  「ふーふー」としないと、、、、火は消えます。
  ふーふーは、育成の原則やプロセスに沿った様々な制度や問いかけかもしれません。
  仮説を立てて準備をし、何が起こっているのかを注視対処してゆけば、実践コミュティ
  への火は自分で燃えさかってゆきます。自分で燃えてくると、企画者の手間は激減
  します。
  適時の適切な支援、これが無いのであれば火は自然消滅します。

・テーマへの魅力を磨き上げる

  実践コミュニティ、そもそも何かに非常に興味があって仲間が集まってきます。
  そのテーマ、その内容、魅力があるものになっているでしょうか。
  魅力があるように、磨き上げる工夫を皆でしているでしょうか。
  テーマに魅力が無いと、そしてお互いに期待に応えられないと、炎はしぼんで
  ゆきます。
  どうやったら磨き上げられるか、テーマの魅力、範囲、有効性、そして会のビジョンなど
  を皆でかかわり合いながら共有してゆくのが良いです。
  今回は「XXの魅力について考えます。」と直接的に広報しても集まらない可能性も
  あります。実施には時期や状況に応じた工夫が必要です。

・相互の信頼

  実践コミュニティは、テーマについての知識・知恵・経験・技術・知識へのリンク
  などの「大切な」自分の資源を「お互いに」出したり受け取ったりして成り立ちます。
  ここで、「あいつは、情報を取ってばかりだ」となると信頼は崩れてきます。
  取ってばかりでも良いけど、使った結果をフィードバックする、など様々に関わり合う
  ことができます。これを一例として、相手を信じることができなくなればコミュニティは
  うまく行きません。
  どうしたら、信頼感が出るか。意識してダイアログ(対話)の機会を作る。参加よりも
  さらに何かをする参画することに価値をおけるように話したりマナー化するなどが考え
  られます。

・運営への工夫

  実践コミュニティは、多くの場合制度化されない組織です。
  支援の環境は作れても、強制はできません。また、機械ではなく関わっているのは人です。
  好不調や繁忙の波もあります。運営の工夫をするのが良いでしょう。
  では、どうすれば良いでしょうか。
  例えば、「極端に気をつける」「思いやる」「状況を見極める」ことが有効でしょう。
  それは、コミュニティの方針で文書化することとなっても極端に文書化すると時間も手間もかか
  りすぎるだけで使う楽しさが無くなるので、もっと軽いところから実践するなどです。

実践コミュニティと言わずとも、自分の会社の知恵を共有してもっと良くなりたい。
共有すると部下が育つ、知恵を融合して新たなことが生まれる、効率良くして別の事に挑戦したい。

こういった動機の「仕事向上の活動」をしてゆこうよ、ということでも良いかもしれません。

そこへの手法は、あります。