二宮尊徳と個性

二宮尊徳、お名前は耳にしたことがあると思います。

江戸後期の小田原藩、酒匂川の下流である現在の小田原市栢山(かやま)で生まれました。

二宮金治郎(通称)の銅像は、幼い頃小学校や中学校で見かけたことがあるかもしれません。
薪を背負って本を読んでいる、勤勉の像を憶えているのではないでしょうか。

二宮尊徳は、農家の出自で後年には幕臣にまでなりました。
その功績は、一言にすると「経済復興」です。
小田原藩という御家の再興を手がけたことが大きなきっかけとなり、小田原藩の経済、つまり
農民の労働と生産の結果である年貢を増やし、藩の経営を安定させました。

小田原藩では、荒れて年貢の取れない農地、そして農民の心を変え農産物を豊かにし、
年貢をきちんと納めることから力を入れています。

この小田原藩の復興に見られる方法は、「報徳」という考え方に基づいています。

小田原藩の復興が成った時、尊徳は時の小田原藩主大久保忠真からどのようなやり方を
行ったのか尋ねられました。

尊徳は、「荒れ地には荒れ地の力があります。荒れ地は荒れ地の力で起こしました。
人もそれぞれ良さや、取り柄があります。それを活かして村を興しました。」と答えました。

これを受けて殿様が、「そのやり方は論語にある『徳を以て徳に報いる』ということ」と
感想を述べたそうです。ここから、尊徳は「報徳」という考え方で自分の実践を形作るこ
とになります。

尊徳は、物や人に備わる良さ、取り柄、持ち味のことを「徳」と名付け、これを活かして
社会に役立てていくことを「報徳」と呼んでいます。尊徳は、あらゆるものに徳があると
考えています。これを「万象具徳」(ばんしょうぐとく)と言います。

最後に、万象具徳の詩(作:小田原報徳博物館 元館長 佐々井典比古氏)をご紹介します。

どんなものにも よさがある
どんなひとにも よさがある
よさがそれぞれ みなちがう
よさがいっぱい かくれてる
どこかとりえが あるものだ
もののとりえを ひきだそう
ひとのとりえを そだてよう
じぶんのとりえを ささげよう
とりえとりえが むすばれて
このよはたのしい ふえせかい

(「ふえせかい」とは、限りあるものから限りないものが生まれる世界の意)

弊社は、「役を立てる」というコンセプトで活動しています。
この「役」と、二宮尊徳の「徳」は、ほぼ同じようにも思えています。

2021年6月29日 | カテゴリー : 基礎知識 | 投稿者 : hiko