企業生命力

組織が生き物のようだ。

こんなコトを感じる方はいらっしゃいませんか。

企業に所属していると、企業のことを「法人」という人として扱う面があることにも気がつきます。
そして、「ソニーがこう言っていた」「この会社の反応は、、、」ということも良く話題に上がります。
本当は、広報担当の言った言葉や新聞記事だったりします。

企業生命力 著者は、アリー・デ・グース氏です。

グース氏は、ロイヤル・ダッチ・シェル・グループの社員として、グループの未来を決める「シナリオプランニンググループ」の責任者として活躍しました。

未来予測ではありません。シナリオプランニングです。 これがかなり重要な点です。

さて、グース氏は、シェルグループが未来も生き残る企業としてどうあれば良いか。こういったことを探究します。

企業が生き延びるにはどうすればよいか。 これを考えました。

「今、数百年生き残っている企業を調べてみる」、まっとうな、驚くべき調査を行います。

まず、社会の屋台骨になる企業の寿命でも、なんと40年程度とのことです。
そして、日本と欧州の企業の平均生存率は、規模に関わりなく13年程度とのこと。

シェルは、「石油が無くなったと仮定したら何をすればよいか」という驚くべき仮定のもとシナリオを考えていきます。(予測ではありません)

その結果。

1.環境に敏感である
2.強い結束力と独自性がある
3.寛大である(権力の分散化)
4.資金調達で保守的である

数百年続く長寿の企業はこのような特徴があるとのことです。

ここまでですと、特徴分析です。(ここまででも非常に有益ですが)
これを踏まえて、以下の考察にいたります。

1.学習能力と適応能力に優れた企業が生き残る
2.コミュニティと性格が明らかである
3.企業の内外との建設的なコミュニケーションを築く能力がある
4.保守的な資金調達がこれらを支える

ここに至って、「企業は生き物」であるとグース氏は意を強くします。

生物のようにしか見えない企業の動作特性、様々にあります。

新入社員は食べ物による、滋養の多い栄養素、馴染むまではストレス反応もあるようです。
逆に、円満に退職するときは、自分の体から出て行く汗などよろしく体に負荷をかけずに出て行きます。そして、自己都合退職やM&Aで人が入る時、引き抜かれる時、体の一部が無理に・壊れるようにストレスがかかります。
体に馴染まないウィルス、免疫でカバーしきれなかった(折り合うことができなかった)外部からの細胞のようです。

グース氏はここまで言っていませんが、組織にお金が必要なように、人間には血液が必要です。
血液のみで生きているわけではなく、何か目的や生きる意志があって活動しています。
この例えだけ、この例えが合っているかも判りませんが、企業もお金だけでは無いようです。

本書では、利益追求のみに走ると、企業の寿命は短くなるとのことです。
長寿型の企業(リバーカンパニー、リビングカンパニー)であったとしても、利益追求型の企業(エコノミックカンパニー)に宗旨替えしたとたん、数年で命脈が尽きてしまう企業が多いとのこと。体質が変わってしまう病人のようです。

非常に面白い、エキサイティングな本です。
企業経営や組織、そして人財を考える上で大切な示唆が得られる本でしょう。

2016年5月26日 | カテゴリー :