リーダーの易経

中国の孔子、 精神分析家のユング、 ニューサイエンスの古典「タオ自然学」を著したフリッチョフ・カプラ、元ソニーでユニークなチーム理論・経営論を唱えている天外伺朗さん。

共通点があります。

日々生活をしていると、なんとなく
「ついているな」
「つかないな」
「思った通り進まないのでなんだかやめておこう」
「虫の知らせを感じたのでやってみるか」

なんてことがあるかもしれません。

今どんな状態になっているのか、今からどんな流れになるのか判ればいいのに

思ったこともあるかもしれません。

それが判る方法があると言います。

易経です。

聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

易経は、時と兆しについて書かれた書物です。
中国で3000年以上の歴史があります。

晩年の孔子は、書物(当時は竹簡)を綴った紐が3度切れるくらい読み込んで研究し、親しい弟子にしか伝えなかったそうです。

コトを起こす、コトの流れの今と未来の参考書、鵜呑みにするかは別として使いこなせば百人力かもしれません。

但し、易経は中国の古典です。読むにもつらそうです。

リーダーの易経 時の変化の道理を学ぶ  竹村 亞希子・著

竹村さんは、愛知県在住の易経研究家です。
20年以上も易経を興味のある方や、経営層の方に講演したり、相談にのっています。

易経というと、何を連想するでしょうか。
街角で、束になった棒をぐしゃぐしゃと使ってなにやら占う人、このような人を思い出すかもしれません。
易経(易)で占うことを、易占と言います。行う人を易者さん、棒は筮竹(ぜいちく)と言うそうです。

さて、占うと何かの結果が出てきます。
易経には、この結果(卦 「か」と言います)の読み方が載っています。

この本では、卦の中でも非常に代表的な結果を元に時間の流れについて解説をしています。
これが、ひよこのリーダーが育つといった内容であり、リーダーとして育つ観点として非常に参考になります。

たとえ話で出てくるのは、龍のお話です。
龍(自分)が、まだまだ修行の前からの心構え、そしてリーダーとして大活躍するときの状況。
さらには、失墜してしまう時のポイント。そうならないようにする対策。

これが、隠れている龍の潜龍から、空を自在に泳いでいる飛龍の時代といった話で展開します。

修行をするとき、活躍するとき、我が身を振り返る書になるでしょう。

論語

声を出して読む日本語、という本が数年前に非常に有名になりました。
大きな声を出していろいろと読み上げます。「赤城の山も今宵限り、、、」なんてのもありました。
声に出して入っていけるものと入ってゆけないものもあります。

声に出して読む、素読は江戸時代は寺子屋でも行われていました。そして今見直されているようです。

論語  孔子・著 金谷治・訳注

言わずとしれた論語です。

論語を始め、古典の素読の話題をよく見かけるようになった気がします。

私もはじめて論語を素読で通して読んでみました。
黙読よりも得るものは多いように感じます。

論語で説かれているのは、仁などの人としての道徳的な規範、徳といったことに関することです。

とは言え、教えてばっかりといった内容ではなく、悩んだりぼやいたり、ちょっと怒ってみたりといった非常に人間くさいところも浮かび上がってきます。

論語は様々な解説書も出ています。
解説書も良いのですが、原文の方が味があるように感じます。
年(経験?)のおかげかもしれませんね。

リーダーシップの流れとしても、倫理的なところを重視する流れが来ています。
ホスピタリティの起源としても論語は重要な位置を占めています。
論語の原文に触れてみる、いかがでしょうか。

読書百遍意自ずと通ずから通ず とは言いますが、少し素読を続けてみましょう。

サーバントリーダシップ

現場が元気な会社。

活気が良い様子が目に浮かびます。
飲食店であれば、調理場も配膳する人も機敏で気が利く立ち回り。
小売店であれば、お客様の意を汲んだ対応や商品の紹介など。
IT系の開発であれば、創造性に富んだ企画や開発、そしてお客様とも共に創り上げる意識を持ったプロジェクト進行。

現場で働く人たちが、組織の目的に沿って活発に動くには、リーダーはどのような役割を果たせば良いでしょうか。

今日ご紹介するのは、

サーバントリーダーシップ  ロバート・K・グリーンリーフ・著

 監訳は、金井壽宏、訳は、金井真弓です。

リーダーと言えば、ぐいぐい引っ張るといったイメージがあるかもしれません。
しかし、そもそも何のためにリーダーは存在しているのでしょうか。

組織の目的に沿って活動するために存在しているのではないでしょうか。

そうであれば、ぐいぐい引っ張るのは手段の一つとなります。

現場が活発な会社では、現場・メンバーが活気にあふれ高い能力を発揮しています。そのような現場におけるリーダーは、脇役であることが多くあります。
では、脇役として何をしているのでしょうか。そして、何をすれば活気のある現場、自立して動く現場となるリーダーになるのでしょうか。

本書では、優れたリーダーは優れたサーバント(奉仕者)であれ、と説いています。

そして、こういったリーダーは、奉仕したいという自然な感情から出発して、傾聴や共感、説得といった接し方をし、人として成長する機会を作り出すとしています。

リーダーはリーディングしているから(引っ張っているから)リーダーなのでしょうか。

フォロワーが「ついて行っても良いよ」という状況を作り出せている人がリーダーなのかもしれません。

ちなみに、リーディングしていてもフォロワーがそっぽを向いている時は、、、裸の王様の様です。

さて、サーバントリーダーシップ(奉仕型リーダーシップ)、自分が前に出て引っ張るリーダーシップではありません。リーダーは方向を示し、万事メンバーが動きやすいように整え、高圧的ではなく相手が理解した上で動けるようにするリーダーシップです。支援型と言っても良いでしょう。
とはいえ、奉仕も支援も今ひとつピンと来づらい考え方かもしれません。

自分の子どもが何かを学ぶ時、あれやこれやと口出しをして「こうしなさい」と言うよりは、学び方などを示してほったらかして見守る方が良い学びに繋がることがおおくあります。

ワークショップ型の研修などで、講義式に縷々説明するよりも、学ぶ場を提供して講師(ファシリテーター)が一歩引く立ち位置で体験から学ぶ方が気づきや学びは大きくなります。

このときの、ほったらかす親、場を提供するファシリテーターは、サーバントリーダーシップを一部実践していると言えるでしょう。

ファシリテーターを体験することが、サーバントリーダーシップを学ぶ良い実践であると感じています。

さて、サーバントリーダーシップは、海外では、倫理的(エシカル)リーダーシップとして扱われているそうえす。リーダーシップが無機的な強権的な道具といったところから、倫理や道徳を持ったリーダーシップとして意識されている証左でしょう。

倫理観をもったリーダーシップ、私や二宮尊徳や吉田松陰、山田方谷、などなど日本の先達が思い出されます。大経営者の松下幸之助にも倫理的な部分を大きく感じます。

サーバントリーダーシップ、案外日本になじみやすい考え方なのかもしれません。
逆ピラミッドの組織形態、最も下で支えているのが社長、そして最前線の現場のために組織があるといった考え方にも通じます。

さて、本書は骨太の一冊です。心して取り組んだ方が良いかもしれません。そして、折に触れて読み返すと様々な学びがありそうです。

利他性の経済学

「情けは人のためならず」という言葉があります。

「国語に関する世論調査」を文化庁が行っています。
2001年1月に行った調査で、以下の設問がありました。

情けは人のためならず
ア  人に情けをかけておくと,巡り巡って結局は自分のためになる
イ  人に情けをかけて助けてやることは,結局はその人のためにならない

アを選んだ人が47.2%、イが48.7%です。
元々の意味は、アです。

我流の憶え方ですが「情けは人のためならず、自分のため」のように、心で言ったりしています。

では、何故人に情けをかけた方が良いかというのは今ひとつはっきりしません。
このことわざでは、自分のためだから人に親切にしなさいと言っているようです。
他人をサポート(援助)するのは、優しさからかもしれません。
巡り巡って自分に返ってくるという点では、因果応報かもしれません。

論語の巻代八、衛霊公第十五には、次のようにあります。

子貢問曰、有一言而可以終身行之者乎、子曰、其恕乎、己所不欲、勿施於人也
 「一生行っていくことを一言挙げると」
 「恕(思いやり)だね。自分の望まないことは人にしないことだ」

また、新約聖書マタイ伝にも
 「人からして欲しいと望むことをその通り人にしなさい」ともあります。

前置きが長くなりました。

利他性の経済学 -支援が必然となる時代へ」 

著者は、舘岡康雄さん、日産の人事部門でマネジメント方法の確立と伝承に従事されています。

この本は、「管理」社会が立ちゆかなくなり、「支援」社会に移行する時代が来つつあるということを自動車製造企業の現場から説得力をもって著している本となります。

自分(だけが)もうかれば良いと思う社会では、管理は有効に機能するのかもしれません。
管理があるということは、予測をすると言うことです。次に、予測をした通りに他人が結果を出すことを期待します。

予測が機能しなくなった時代には、管理は有効な手法ではなくなるのでしょう。

この本では、管理は機能しなくなり、支援、そしてその結果としての利他(他人を利するコト)が自分を利するコトのに有効なことを述べています。

例えば、工場の工程が4人で1人10日間の工程がある例が出てきます。
何事もなく進むと40日で終わる作業を考えます。
これが何回かの設計変更が起こるように仕組んで、お互いに支援をする例と自己中心的に動いた結果をゲーム理論を使って検証すると、、、
 自己中心的に動く場合は、最高160日かかります。
 お互いに支援する場合は、50日で終わります。

このこと一つをとっても、自己中心的に動くよりも支援をする動きの方が「得」です。

変化がゆっくりで、関係者が限られる世界であれば160日かかっても良いかもしれません。
変化が急速で、関係者が膨らむ一方の現代では、破綻を起こす「管理」よりも「支援」をお互いに行える環境を整備する方が「得」ということになります。

そう言えば、「後工程はお客さま」といった考え方もありますね。

管理を「させる/させられる」の考え方だとすると支援は「して上げる/してもらう」という考え方になるとのこと。

と言うことは、他人にしてあげた援助が巡り巡って因果応報、自分の工程を助けます。
助けてもらえるような人間や組織、環境になった方が良いですね。

してもらうことを丁寧に思い出して心理状態を改善する方法もあるとか。

支援がなぜ必要かといった理由がわかる一冊です。
博士論文を下敷きにしているので、少し難しい表現もありますが、人や組織における支援の必然性を考える際に必読の本です。

ちなみに、今までの管理と結果だけを考える考え方を「リザルトパラダイム」と呼んでいます。
そして、今から来るパラダイムも含めて並べると、
 リザルトパラダイム
      ↓
 プロセスパラダイム
      ↓
 コーズパラダイム
とのこと。

良い原因を創れば、良いプロセスとなり、結果がついてくるという考え方になるのではないかとのこと。
縁起、善因善果なのでしょう。

良い原因(コーズ)、良い流れ(プロセス)を創ってゆきたいものです。

完全なる経営

何のために仕事をしているのだろう

と、時折考えたりすることがあるかもしれません。

働いている自分、家にいる自分、遊んでいる自分。
全て大事な自分です。

自分の「ハタラキ」に対する意味、たまには時間をとって考えた方が実は健康的なような気もします。

完全なる経営  著者は、A.H.マズロー 監訳 金井寿宏さんです。

マズロー、、、聞いたことあるかも、、と思う方もいらっしゃるでしょう。

マズローの欲求階層説(欲求段階説、Maslow’s hierarchy of needs)が有名ですね。

人間の欲求には、階層があって
 
 自己実現欲求
 承認と自尊心の欲求
 所属と愛の欲求
 安全の欲求
 生理的欲求

と説明されています。
実は、有名なこの三角形の階層表そのものはマズローは書いていないそうです。
マズローの仮説を組み立てるとこのようになるとのこと。

働きがいのある会社や組織とはどういった組織でしょうか。

マズローは30年以上も前に提言をしています。
それが「進歩的経営管理」への仮説です。

それは、
 人間は信頼できる  ものであり、
 自己実現への本能的な欲求を皆が持っている  ことを前提にしています。

入社したときにあれほどやる気のある明るい人だったのに、、、、今はくすんで見える。
こういったことはありませんか。

そう、環境が明るい人を変えたのでは無いかとマズローは言っています。
となれば、どのような環境とすればよいか。

そのヒントが論考されています。

一言にすると、人間性を発揮できる環境を整える。となります。

私なりに解釈すると、発展し続ける組織への人間性を発揮するマネジメントポイントとは

自然な自分であり続けることを支援する組織

のように受け取れます。
お互いの人間性を尊重・尊敬し、信頼し、善い組織目標に向かって進む。
こういったように感じます。

特に、創造性に関しては 「 創造性に関する憶え書(追記) 」 が参考になるでしょう。

金井さんの解説も非常にコンパクトにまとまっています。

村上ポンタ秀一名人のドラム、ライブで聞いたコトもありますがまさにその通りでしょう。
「もうちょっと、イイのが叩けそうだからたたくんだ」とでも言いそうですね。
職人が「まだまだ修行」というのも、 『 自己実現 』 を続けているのでしょう。

NHKの番組、プロフェッショナルを見て、この本を読むと腑に落ちるところが多いのではないでしょうか。

かなり分厚いですが、自己実現を考える上で重要なヒントが得られるのではないでしょうか。

2016年6月19日 | カテゴリー :

企業生命力

組織が生き物のようだ。

こんなコトを感じる方はいらっしゃいませんか。

企業に所属していると、企業のことを「法人」という人として扱う面があることにも気がつきます。
そして、「ソニーがこう言っていた」「この会社の反応は、、、」ということも良く話題に上がります。
本当は、広報担当の言った言葉や新聞記事だったりします。

企業生命力 著者は、アリー・デ・グース氏です。

グース氏は、ロイヤル・ダッチ・シェル・グループの社員として、グループの未来を決める「シナリオプランニンググループ」の責任者として活躍しました。

未来予測ではありません。シナリオプランニングです。 これがかなり重要な点です。

さて、グース氏は、シェルグループが未来も生き残る企業としてどうあれば良いか。こういったことを探究します。

企業が生き延びるにはどうすればよいか。 これを考えました。

「今、数百年生き残っている企業を調べてみる」、まっとうな、驚くべき調査を行います。

まず、社会の屋台骨になる企業の寿命でも、なんと40年程度とのことです。
そして、日本と欧州の企業の平均生存率は、規模に関わりなく13年程度とのこと。

シェルは、「石油が無くなったと仮定したら何をすればよいか」という驚くべき仮定のもとシナリオを考えていきます。(予測ではありません)

その結果。

1.環境に敏感である
2.強い結束力と独自性がある
3.寛大である(権力の分散化)
4.資金調達で保守的である

数百年続く長寿の企業はこのような特徴があるとのことです。

ここまでですと、特徴分析です。(ここまででも非常に有益ですが)
これを踏まえて、以下の考察にいたります。

1.学習能力と適応能力に優れた企業が生き残る
2.コミュニティと性格が明らかである
3.企業の内外との建設的なコミュニケーションを築く能力がある
4.保守的な資金調達がこれらを支える

ここに至って、「企業は生き物」であるとグース氏は意を強くします。

生物のようにしか見えない企業の動作特性、様々にあります。

新入社員は食べ物による、滋養の多い栄養素、馴染むまではストレス反応もあるようです。
逆に、円満に退職するときは、自分の体から出て行く汗などよろしく体に負荷をかけずに出て行きます。そして、自己都合退職やM&Aで人が入る時、引き抜かれる時、体の一部が無理に・壊れるようにストレスがかかります。
体に馴染まないウィルス、免疫でカバーしきれなかった(折り合うことができなかった)外部からの細胞のようです。

グース氏はここまで言っていませんが、組織にお金が必要なように、人間には血液が必要です。
血液のみで生きているわけではなく、何か目的や生きる意志があって活動しています。
この例えだけ、この例えが合っているかも判りませんが、企業もお金だけでは無いようです。

本書では、利益追求のみに走ると、企業の寿命は短くなるとのことです。
長寿型の企業(リバーカンパニー、リビングカンパニー)であったとしても、利益追求型の企業(エコノミックカンパニー)に宗旨替えしたとたん、数年で命脈が尽きてしまう企業が多いとのこと。体質が変わってしまう病人のようです。

非常に面白い、エキサイティングな本です。
企業経営や組織、そして人財を考える上で大切な示唆が得られる本でしょう。

2016年5月26日 | カテゴリー :