サーバントリーダシップ

現場が元気な会社。

活気が良い様子が目に浮かびます。
飲食店であれば、調理場も配膳する人も機敏で気が利く立ち回り。
小売店であれば、お客様の意を汲んだ対応や商品の紹介など。
IT系の開発であれば、創造性に富んだ企画や開発、そしてお客様とも共に創り上げる意識を持ったプロジェクト進行。

現場で働く人たちが、組織の目的に沿って活発に動くには、リーダーはどのような役割を果たせば良いでしょうか。

今日ご紹介するのは、

サーバントリーダーシップ  ロバート・K・グリーンリーフ・著

 監訳は、金井壽宏、訳は、金井真弓です。

リーダーと言えば、ぐいぐい引っ張るといったイメージがあるかもしれません。
しかし、そもそも何のためにリーダーは存在しているのでしょうか。

組織の目的に沿って活動するために存在しているのではないでしょうか。

そうであれば、ぐいぐい引っ張るのは手段の一つとなります。

現場が活発な会社では、現場・メンバーが活気にあふれ高い能力を発揮しています。そのような現場におけるリーダーは、脇役であることが多くあります。
では、脇役として何をしているのでしょうか。そして、何をすれば活気のある現場、自立して動く現場となるリーダーになるのでしょうか。

本書では、優れたリーダーは優れたサーバント(奉仕者)であれ、と説いています。

そして、こういったリーダーは、奉仕したいという自然な感情から出発して、傾聴や共感、説得といった接し方をし、人として成長する機会を作り出すとしています。

リーダーはリーディングしているから(引っ張っているから)リーダーなのでしょうか。

フォロワーが「ついて行っても良いよ」という状況を作り出せている人がリーダーなのかもしれません。

ちなみに、リーディングしていてもフォロワーがそっぽを向いている時は、、、裸の王様の様です。

さて、サーバントリーダーシップ(奉仕型リーダーシップ)、自分が前に出て引っ張るリーダーシップではありません。リーダーは方向を示し、万事メンバーが動きやすいように整え、高圧的ではなく相手が理解した上で動けるようにするリーダーシップです。支援型と言っても良いでしょう。
とはいえ、奉仕も支援も今ひとつピンと来づらい考え方かもしれません。

自分の子どもが何かを学ぶ時、あれやこれやと口出しをして「こうしなさい」と言うよりは、学び方などを示してほったらかして見守る方が良い学びに繋がることがおおくあります。

ワークショップ型の研修などで、講義式に縷々説明するよりも、学ぶ場を提供して講師(ファシリテーター)が一歩引く立ち位置で体験から学ぶ方が気づきや学びは大きくなります。

このときの、ほったらかす親、場を提供するファシリテーターは、サーバントリーダーシップを一部実践していると言えるでしょう。

ファシリテーターを体験することが、サーバントリーダーシップを学ぶ良い実践であると感じています。

さて、サーバントリーダーシップは、海外では、倫理的(エシカル)リーダーシップとして扱われているそうえす。リーダーシップが無機的な強権的な道具といったところから、倫理や道徳を持ったリーダーシップとして意識されている証左でしょう。

倫理観をもったリーダーシップ、私や二宮尊徳や吉田松陰、山田方谷、などなど日本の先達が思い出されます。大経営者の松下幸之助にも倫理的な部分を大きく感じます。

サーバントリーダーシップ、案外日本になじみやすい考え方なのかもしれません。
逆ピラミッドの組織形態、最も下で支えているのが社長、そして最前線の現場のために組織があるといった考え方にも通じます。

さて、本書は骨太の一冊です。心して取り組んだ方が良いかもしれません。そして、折に触れて読み返すと様々な学びがありそうです。

利他性の経済学

「情けは人のためならず」という言葉があります。

「国語に関する世論調査」を文化庁が行っています。
2001年1月に行った調査で、以下の設問がありました。

情けは人のためならず
ア  人に情けをかけておくと,巡り巡って結局は自分のためになる
イ  人に情けをかけて助けてやることは,結局はその人のためにならない

アを選んだ人が47.2%、イが48.7%です。
元々の意味は、アです。

我流の憶え方ですが「情けは人のためならず、自分のため」のように、心で言ったりしています。

では、何故人に情けをかけた方が良いかというのは今ひとつはっきりしません。
このことわざでは、自分のためだから人に親切にしなさいと言っているようです。
他人をサポート(援助)するのは、優しさからかもしれません。
巡り巡って自分に返ってくるという点では、因果応報かもしれません。

論語の巻代八、衛霊公第十五には、次のようにあります。

子貢問曰、有一言而可以終身行之者乎、子曰、其恕乎、己所不欲、勿施於人也
 「一生行っていくことを一言挙げると」
 「恕(思いやり)だね。自分の望まないことは人にしないことだ」

また、新約聖書マタイ伝にも
 「人からして欲しいと望むことをその通り人にしなさい」ともあります。

前置きが長くなりました。

利他性の経済学 -支援が必然となる時代へ」 

著者は、舘岡康雄さん、日産の人事部門でマネジメント方法の確立と伝承に従事されています。

この本は、「管理」社会が立ちゆかなくなり、「支援」社会に移行する時代が来つつあるということを自動車製造企業の現場から説得力をもって著している本となります。

自分(だけが)もうかれば良いと思う社会では、管理は有効に機能するのかもしれません。
管理があるということは、予測をすると言うことです。次に、予測をした通りに他人が結果を出すことを期待します。

予測が機能しなくなった時代には、管理は有効な手法ではなくなるのでしょう。

この本では、管理は機能しなくなり、支援、そしてその結果としての利他(他人を利するコト)が自分を利するコトのに有効なことを述べています。

例えば、工場の工程が4人で1人10日間の工程がある例が出てきます。
何事もなく進むと40日で終わる作業を考えます。
これが何回かの設計変更が起こるように仕組んで、お互いに支援をする例と自己中心的に動いた結果をゲーム理論を使って検証すると、、、
 自己中心的に動く場合は、最高160日かかります。
 お互いに支援する場合は、50日で終わります。

このこと一つをとっても、自己中心的に動くよりも支援をする動きの方が「得」です。

変化がゆっくりで、関係者が限られる世界であれば160日かかっても良いかもしれません。
変化が急速で、関係者が膨らむ一方の現代では、破綻を起こす「管理」よりも「支援」をお互いに行える環境を整備する方が「得」ということになります。

そう言えば、「後工程はお客さま」といった考え方もありますね。

管理を「させる/させられる」の考え方だとすると支援は「して上げる/してもらう」という考え方になるとのこと。

と言うことは、他人にしてあげた援助が巡り巡って因果応報、自分の工程を助けます。
助けてもらえるような人間や組織、環境になった方が良いですね。

してもらうことを丁寧に思い出して心理状態を改善する方法もあるとか。

支援がなぜ必要かといった理由がわかる一冊です。
博士論文を下敷きにしているので、少し難しい表現もありますが、人や組織における支援の必然性を考える際に必読の本です。

ちなみに、今までの管理と結果だけを考える考え方を「リザルトパラダイム」と呼んでいます。
そして、今から来るパラダイムも含めて並べると、
 リザルトパラダイム
      ↓
 プロセスパラダイム
      ↓
 コーズパラダイム
とのこと。

良い原因を創れば、良いプロセスとなり、結果がついてくるという考え方になるのではないかとのこと。
縁起、善因善果なのでしょう。

良い原因(コーズ)、良い流れ(プロセス)を創ってゆきたいものです。