古典の力(14)無用の用

古典の力、日本や中国の古典からチームや組織の力を高める言葉に焦点を当てています。

第十四弾、老子から

有の以て利を為すは、無の以て用を為せばなり。

形あるものが便利に使われるのは、空虚なところがその働きをするからだ。

お茶を飲む際に、湯飲みを使います。湯飲みの中の部分、水がたまりそうなところにお茶を入れて、ためて飲みます。
住む時には、家など囲われたところに住みます。壁や天井で囲われたところで雨露をしのぎます。

湯飲みが、お茶を飲むのに便利なのは空虚なところを作りだしているからです。
住居が住むのに便利なのは、人間が中で暮らしても不便無いように余裕を持った囲われた空間を作り出しているからです。

部下に指示を与えて行動や命令で満たしすぎるのではなく、形づくる外側の部分、目的やゴールやビジョンや夢を語って、その器の中で部下の行動や成果を満たすような動き方をする方がより良いのではないでしょうか。

この例えですと、湯飲みの壁が厚すぎて水の入るところがとても小さい器は、命令や規則指示が多すぎて部下の発揮できる行動や成果では少ししか満たすことができない、ということになります。

易経の十四番目の卦(か)は、「火天大有」(かてんたいゆう)と言います。
リーダーが虚心で、会長(さらに上司)や部下が有能で非常に良いチームワークがとれる、とも解される良い卦です。空虚(虚心)な方が働きを形づくられることが分かっているという古くからの知恵でしょう。