これまで、BSC構築の流れを見てきました。
流れとは、以下の通りとなります。
1.ビジョンと戦略の策定
2.重要成功要因(CSF)分析による視点の洗い出し
3.戦略マップの作成と戦略目標の設定
4.重要成功要因の洗い出し
5.業績評価指標の設定
6.数値目標の設定
7.アクションプランの作成
また、上記の各プロセスにはそれぞれ検討結果としての書類が生産されると思います。
各プロセスは、書類(の中に込められた思い、考え)を引き継ぐ形で進んでいきます。
さて、BSC構築をコミュニケーションの視点でまとめると、例えば以下のように分類でき
ます。
①打ち合わせ
BSCの詳細テーマを検討する打ち合わせが行われます。
各打ち合わせには、打ち合わせの参加者(1部署、多部署)や
打ち合わせのテーマがあり、発散系の話題、行動計画策定系の話題等の
テーマの性格があります。
参加者の人数、部署(利害関係)の多様さ、話題によって打ち合わせの
会議設計(ミーティングプロセスの設計)が変わってくるでしょう。
②コミュニケーション基本スキルの活用
BSCは、各人の思いを集めて、合わせて、浸透させるプロセスとも言えます。
BSCの構築プロセスに参加される方は、以下のコミュニケーションを意識すると
円滑に進行するでしょう。
どれも基本的なスキルです。
聞く、話す、表現する、すり合わせる(調整する)
③部署間調整
特に全社でBSCを導入する際は、部署間の調整が欠かせません。
この、調整のコミュニケーションは以下のように分けられます。
インプット系 部署間・メンバー間の情報収集
アウトプット系 メンバーや部署への思いの浸透、調整
以上、BSCの構築はコミュニケーションの塊、とでも表現できるでしょう。
BSCを「ビジョン」と大きくまとめ込むとすると、BSCの構築は次のようにまとめられる
とも感じています。
BSC構築とは、「ビジョン共有」「ビジョン構築」「ビジョン浸透」を行うこと。
この表現はBSCの学術的な定義には、必ずしも沿っていません。
しかし、このくらい大掴みで取り組んで各プロセスをきちんと押さえると、良いBSCの構
築と実践ができるように思えます。
バランススコアカード(BSC)の7番目のステップは
アクションプランの作成 になります。
6番目のステップまでで、
戦略マップ、重要成功要因、業績評価指標、数値目標の洗い出しと合意ができています。
いよいよ、この計画を行動に移すプランを策定・作成します。
全社でのBSCを構築した場合、アクションプランはざっくりとしたものから、最終的には部門で行動する計画となります。
・戦略の整合性がとれるよう
・漏れがないように
・行動に必要な事項(6W2H等)
・KPI、KGIの測定方法
こういったことを策定します。
ここでも、各部門の状況等に応じたプランの調整が必要となるかもしれません。
アクションプランまで作成すると、あとは実行あるのみです!
PDCAのPに基づいて、DCAと進めてゆきましょう。
バランススコアカード(BSC)の6番目のステップ
数値目標の設定になります。
前のステップで、業績評価の指標が合意できていることだと思います。
計測できる指標が定まったならば、
いつ時点で
どのレベル
の数値になっているのが良いか、
どのレベルになっているのが戦略に合っているかを定めます。
数値目標を定める上でも、将来(3年後等)どのようになっている仮定か
その上で、次回計測時点(半年先等)でどのようになっているのが良いかを定めます。
数値目標を設定する上でも、衆知を合わせて目標や制限、乗り越える壁を意識するのが良いでしょう。
戦略の合意や策定、数値等の目標など、いたるところで衆知を合わせることが必要です。
衆知を合わせないと、理屈として間違ったり、または偏ったり、参画できない思い入れのないBSCになってしまいます。
バランススコアカード(BSC)の5番目のステップは、
業績評価指標の設定になります。
前のステップで、戦略目標に沿ったCSF(重要成功要因)が導き出せれていると思います。
その内容に従って、CSFを計測できる指標を選びます。
例えば、顧客の視点の
戦略目標 感動する品質でのサービス提供
重要成功要因 期待以上のサービス提供
と、仮になっている場合は、アンケートやお客さまの振るまい、XX提供率や稼働率といったCSFを測定できる業績評価指標を選びます。
どのような指標がCSFを計測できる結果となるか、自分達が可能なことか、戦略に合致しているかといった事項は、再度衆知を結集するのが良いでしょう。
各CSFや組織の状況そして事業の構造によって、似たようなCSFでも違う業績評価指標が出てきます。
バランススコアカード(BSC)の4番目のステップは、
重要成功要因(CSF)の洗い出しになります。
前のステップまでで、戦略マップと戦略目標までが明確になっていると思います。
その内容に従って、
例えば、
顧客の視点で「感動する品質でのサービス提供」という戦略目標を立案したとします。(あくまでサンプルです)
感動する品質を提供するための成功要因を関係者で話しあい、「これが成功するポイントだ」という点をまとめ込みます。
これが、「重要成功要因 CSF(Critical Success Factors)となります。
上層部だけ、現場だけでCSFを決めると、思いが一つになっていない可能性があります。
出来る限り衆知を結集するのが良いでしょう。
戦略マップ上に、多くの戦略目標が明示されていると思います。
この一つ一つについて、CSFを挙げていきます。
ということで、シンプルなステップですが、案外衆知を集めるのに時間がかかるかもしれません。
バランススコアカード構築の第3ステップは、
「戦略マップの作成と戦略目標の設定」です。
第2ステップの「重要成功要因分析による視点の洗い出し」において、
d-1.当社のBSCで採用する視点 や
d-2.それぞれの視点の戦略目標の候補 がアウトプットとして出ていると思います。
もしかしたら、d-2は出ていないかもしれません。
さて、d-1でいくつかの視点が出ていると思います。
この個数はそれほど多くないい方が良いです。一般的には3~5個程度ということです。
標準的に提示されているのが
財務の視点
顧客の視点
業務プロセスの視点
人材と変革の視点
です。
では、これを最初から採用すれば良いかというと、実はそうでもありません。
その理由は、
1.組織の実情にあっていない(かもしれない)
2.関係者の合意ができていない(ことが多い)
からです。
関係者の思いを合わせて、組織の実情(理念・ビジョン等)に合わせた視点が定まると良いBSCの戦略が構築できるようです。
そして、各視点は相関関係があります。これも視点の検討で行っておきます。
例えば、財務的な目標を重要視するのであれば財務の視点を最上位に配置します。
ここまでが前回までの段階です。
そして、今回は戦略マップを策定します。
ということで今回のテーマで会議体を敢えて命名すると以下のようになります。
E:戦略マップ策定会議
出てくるアウトプットは、e:戦略マップとなります。
戦略マップは、上位の視点から戦略を考え、下位の視点の目標としてゆきます。
ここで、相互の影響を考える用途でシステム図(システムシンキング)を導入しても良いでしょう。
また、それぞれの戦略を評価するのにシステム図化するのも有効と思います。
戦略マップは、戦略の候補や代替案が百出するフェーズともなります。
各上位目標を実現する戦略の抽出や相関関係は、参加・検討する人たちの価値観やディスカッションそして合意の質に依存します。
価値観等をすりあわせた、素直な意見を表明して合意ができる会議が必要でしょう。
バランススコアカード構築の第2ステップは、
「重要成功要因分析による視点の洗い出し」です。
バランススコアカードを聞いたことがある方は、以下の言葉を耳にされたこともあると思います。
財務の視点
顧客の視点
業務プロセスの視点
人材と変革の視点
バランススコアカードは、この4つの視点で考えると通常は言われています。
通常はということは、実は4個でこの内容に縛られる必要はありません。
例えば、「財務の視点」ではなく行政ですと「生活環境の視点」とか、「顧客の視点」でなく「住民の視点」とか、またはグループ企業を持っている会社であれば「関連会社の視点」が加わるかもしれません。
上記の4視点は、だいだいこの内容であればどこでも当てはまる可能性が高いというものと考えられます。
さて、この視点の内容と個数を導き出すのに、重要成功要因(CSF:Critical Success Factors)を洗い出します。
これは、第1ステップで決めた、「ビジョン」を「戦略を通して実現する」には、「こんな考え方の成功が重要だ」という項目を洗い出します。
その結果が「財務の視点」といった言葉になります。
従って、まずは「利益」等の身近で具体的な言葉が出ると思います。これをグルーピングできるような言葉にします。
さて、ここでの会議は名付けるとするならば、以下の感じになります。
(A-C,Dは会議体の通番です。C までは、トラックバック等で以前の記事を参照下さいね。)
D.CSF分析による視点検討会議
そして、アウトプットは、
d-1.当社(当組織)のBSCで採用する視点
d-2.戦略目標候補
です。
と言うことで、バランススコアカード解説のチャレンジは続きます。
補足
BSCでも、TOC、システムシンキングでも相関関係を示す図が出てきます。特性があります。ここもいつか解説できればと考えています。
バランススコアカード(BSC)の作成における最初のステップは、「ビジョンと戦略の策定」です。
バランススコアカードを何かの動機で作成する場合、「アクションプラン」まで落とし込むと思います。アクションプラン、つまり行動計画まで落とし込むには、自分の進むべき道が判らないといけません。
BSCを、どの部署で策定するかによりますが、以下のパターンがあります。
①ビジョンがある場合は内容を再確認する
②ビジョンが無い場合は、策定する
企業全体のBSCの場合は、企業理念についてです。
企業部門の場合は、企業目標と部門目標となるでしょう。
自治体、病院やNPOの場合は、それぞれの目指すべき姿というようになります。
さて、ビジョンが曖昧であったり、無い場合は策定が必要です。
ビジョンの策定には、「SWOT分析」も使えます。
SWOT分析の方法は割合とシンプルです。
①外部環境分析
自らの置かれている外部環境を分析し、「チャンス」や「脅威」と感じる部分についてリストアップします。
②内部環境分析
自らの内部環境において、「強み」や「弱み」と感じる部分についてリストアップします。
これはシンプルなのですが、裏付けの数字や、判断の基準、表現の仕方によってとらえ方が変わってきます。(とらえ方の質とでも言えると思います)
これを4つのマス目に配置し、活用します。
例えばビジョンであれば、SWOTの状況と、関わっている人そして組織の価値観を勘案してビジョンを策定します。
戦略の立て方は、例えば
・強みとチャンスを活かす
・脅威を強みでカバー、、、、といった、ビジョンや価値観等で判断を行います。
と、簡単に解説しましたが、BSCは複数人で策定するのが大多数と思います。
ということは、ここまでで既に会議が何回も行われます。
(会議体にAから通番をつけていきます)
A.SWOT抽出会議
B.ビジョン策定会議
C.戦略策定会議
そして、アウトプットは、
a.SWOT分析表
b.ビジョン
c.戦略
(実は、ビジョンひとつとっても、策定するのに一仕事だったり、方法論は他にもあります)
少し横道にそれますが、ツールであるBSCも効率的で本質に向かえる会議ファシリテーションが行えるなら、共感・合意のできる、その組織の本質を突いた結果が出ると考えられます。
バランススコアカード( BSC : Balanced Score Card)とは、経営戦略を行動にうつすためのツールです。
近年、企業のみならず病院や自治体も、「経営」という概念が使われ始めています。
企業経営の場合、「お金」が第一目標とされることが多いのですが、最近では「何かしらのメリット(利益)」を作り出すようにと変わりつつあります。
例えば、自治体経営は住民の利益のために。企業経営においても利益は上げないとならないのですが、まず社員満足度を上げようとすることや環境を考えた経営ということも叫ばれてきています。
さて、こういった経営戦略は、なかなか個々の部署や個々人の行動、行動プランに結びつけることができません。
経営戦略を、個々人の行動プランにまで詳細化して、行動の評価・フィードバックまで行いやすい経営管理手法がBSCです。
大規模な経営にも使えますし、小さな商店でも使えます。
「改めて言われなくても、昔からやっているよ」というところもあると思います。
さて、BSCでは、
「経営戦略」を「仮説」を経由して「行動目標(アクションプラン)」にして、実際に実行して、成果を上げる。
成果が上がらない場合は、何が悪かったを見直して(フィードバック)再度実行します。
アクションプラン作成までの流れは、以下の通りになります。
1.ビジョンと戦略の策定
↓
2.重要成功要因(CSF : Critical Success Factors)分析による視点の洗い出し
↓
3.戦略マップの作成と戦略目標の設定
↓
4.重要成功要因の洗い出し
↓
5.業績評価指標の設定
↓
6.数値目標の設定
↓
7.アクションプランの作成
BSCの各ステップは、あまり個人で行うものではありません。
各々のステップで、できるかぎり関係する方の思いを入れた方が良いBSCとなり、結果として良い経営が行われるようになります。
つまり、良いBSCが作れて・使えるようになれば、同時に良い組織にもなるという訳です。
BSCの第一人者である吉川先生から手ほどきも受けた際の話しです。
吉川先生も「ブレストや打合せの時、模造紙の周りにポストイットを持って、立って話し始めると良い結果となる」ことをおっしゃっていました。
会社の規模、やりたいこと(経営目標)に応じた関係者の巻き込みを、BSCというツールでまとめ込むと、良い経営結果がでると考えられます。
ということで、BSCの解説についてもチャレンジしていきます。