ファシリテーションの研修、ワークショップを体験すると、ファシリテーターの役割に戸惑いを覚える人が多くいらっしゃいます。
それでも、一歩引いた位置で、場や人の支援と促進を体感すると、
「なじめなかったやり方・考え方が判ってき始めている」
といった気づきに繋がります。
ファシリテーションを初めて学ぶ体験する方にとっては、文字情報だけだと伝わりづらいことが多くありますが、「こんな人」と言えば少しは判りやすいかもしれません。
ファシリテーターとは、例えば、
・長老のように全体を見守って必要最低限の時だけ何かする
・黒子のように普段は隠れているが準備万端整える
・宴会部長のように人が盛り上がる、宴会が進むのをサポートする
ような側面があります。
こんな例えもあります。
・ライフセーバーのようにじっと黙って見ていて、いざというときは頼りになる
・砂場で遊ぶ子どものお母さんのように、優しく見守って、その子に危険が無いようにする
ファシリテーターでは無い動きとしては、
・自分で言ってまとめる議長
・何もしないでずっと傍観している監督者
のような例えが挙げられます。
ファシリテーターの立ち位置、例え、考えてみると面白いと思います。
ビジョン共有などのファシリテーション、そして研修を重ねてゆくと、ポイントもしくはコツが見えてきます。
「感じる」ということが技能的なコツだとすると、姿勢的なコツというかポイントです。
それは、 素直 です。
場の目的やゴールを十分に踏まえておいて、
その場の流れ や
起こっていること
参加してい皆さん と 「素直」 に向き合ってみる。
このようなことが非常に重要です。
たとえば、話の流れが予定と違うので焦って何かをする、ことがあるかもしれません。
これは、もしかしたら流れにならない何かの理由が潜んでいるのかもしれません。
その理由や流れの異常が感じられるのは、起こっていることに素直に向き合えている時です。
流れに素直に向き合って様々なことを感じることができれば、ファシリテーターとしての打ち手はいろいろと見えてきます。
例えば、問題解決の話し合いでギャップの定義でもめている時は、少し前の問題の表現を共有するところに立ち戻る、、、のようなことができるようになってきます。
素直な姿勢、心がけると良いかもしれません。
ファシリテーションを身につけるにはどうすれば良いでしょうか
このように聞かれることが良くあります。
説明してきたファシリテーションの流れは、かなりシンプルなものです。
話題の共有 → 話を広げる → 話を整理する → きちっと終わる
この流れ、4つのプロセスを意識するだけでもかなり違ってきます。
また、このプロセスが成立する前提、このプロセスを促進するツールが各種あるという言い方ができます。
この流れが基本になります。
では、基本になるものがあって、まずは基本を身につけるとするならばどのようにすれば良いでしょうか。
一例としては、自転車の乗り方が身につく、方法のように思えます。
自転車に乗るのを教わるとき、教える人が付いてくれたりします。
最初は補助輪があったりします。
いろいろ口で言われたりして体がうまく動きません。
そして、少し動かして調子よく前に進むようになってきます。
補助輪もはずして転んだりしながら慣れてきます。
いろいろな思い出があるかもしれません。
ファシリテーションを身につけるのも、ほぼ同様なことのように感じています。
シンプルな流れ、まずはこれを実践できること。
使えるようになると別の疑問が湧いてきたりします。そして応用編や細かな技術など。
茶道に「守、破、離」という習熟の流れについての説明があります。
まずは、基本を学んで繰り返し使ってみるのが守です。
ファシリテーションの流れ、役割、ルールなどを、まずは自分の職場に合うように自分で考えて使ってみる。
これが第一歩でしょう。
易経には、想像上の生物の龍が成長する過程が描かれています。リーダーの成長、ものごとの習熟とも読める過程です。
その過程の3番目に、「基本を忠実に繰り返して毎回反省する」時がある、と書かれています。
学んだら繰り返して身につけると言うことです。
さらに、日本舞踏を学んだ方のお話です。
やはり型を学んで、最初は型が体になじまなかったそうです。そして、「手取り足取り教わら『ない』」で繰り返すうちに、『型を自分で解釈するプロセス』が大事だと気づいたということです。
これが、体を通して工夫する、つまり「体で考える」ことだと気づいたということです。
使いながら自分で考えて、自分で気づいて、自分で使えるようになる。
この流れは、まさにファシリテーションを学ぶ、身につける流れのように考えています。
さて、上級のスキルは無いのかとも質問があります。
場の観察や介入なども含めて、ファシリテーター育成上のいろいろなスキルや心理学的なスキルがそれに相当するでしょう。
ファシリテーション研修を受講されると、非常に悩まれる方がいます。
例えば、
私の立場は課長(リーダー)です。 (部長等々別の立場の方も)
会議は私が主催して、私が仕切らなければなりません。
ファシリテーションは使いたいのですが、どうしたら良いか判りません。
この悩み(疑問)に対しては、いくつか対処案(導入案)があります。
一つは、
使えるところだけいいとこ取りしてみてはどうですか
ということです。
会議を(ファシリテーション)プロセスに沿って流してみる。
板書してみる。
等々、参加される皆様の立場で得るところがあります。
これはこれで、「それでも良いんだ」ということで良いのですが、ちょっとひねった答えでした。
悩みは、
・ファシリテーターは内容には入らない
・立場上(課長としては等)内容に入らざるを得ない
でした。
対処の一例です。
・立場を明言する
「今は進行役として発言する」
「今は、リーダーとして発言」
ただし、冷静に進行をする信頼感が必要です。
・不要なときは場をはずす
いなくても良い状況では、席を外すのも一手です。
・会議の進行役は他人に任せてみる
中堅メンバーなどに進行を任せてみても良いでしょう
・1回は、自らが進行役(ファシリテーター)に徹してみる
メンバーに対して「進行役に徹してみる」と明言して、
まずは進行役に徹してから考えるのも一案です。
・そのままプロセスの進行と内容への介入を行う
率直にものが言える、信頼感が醸成されている場合です。上級編の感じです。
つまり、
内容に入らない方が良い状況であれば入らない。
入っても良い状況であれば入る。
場の目的・目標が達成できるのであれば、いろいろな対処案が考えられるでしょう。
会議やワークショップなど何かのファシリテーションを行うとき、良いファシリテーションを行うコツは?
と問われると
感じる。 ことに気をつける。
というのがひとつの答えかもしれません。
いわゆるコツと言っても良いです。
感じてその後どうするか不思議に思うかもしれません。
何かするかもしれませんし、しないかもしれません。
例えば、とある人が発言しそうな表情をしていてだまっている時、
しばらく待つのも良い選択肢です。
場が流れたい雰囲気がする場合は、早めに促すかもしれません。
感じるためには、観察力が必要です。
但し、ある程度観察ができるようになれば、なんとなく全体を見ているという感じになります。
中には、場を信じてその場からいなくなるという方もいらっしゃいます。
特にAI,OST,FutureSearch,WorldCafeなどのホールシステムアプローチにおけるファシリテーションを含めた場の動きや手助けは、場や流れをを感じて素直に動くことがひとつのキーのようです。
会議などのファシリテーションにおいても、場や人そして流れを感じて、自分を信じて動いてもよいでしょう。また動かないのも良いでしょう。
内容ではなく、雰囲気や流れを感じることを意識すると、ファシリテーションが少しレベルアップするかもしれません。
ファシリテーションを活用した理想のチーム。
どのような姿、活動をイメージできますか?
リーダーがあれこれ指示をしている姿でしょうか。
一つの姿は、以下のような活動イメージだと考えています。
(但し、ファシリテーション、ファシリテーターのイメージが違う場合には、違う活動イメージになります)
自らが考え、自らが動き、支援し合い、チームで目標・目的に向かって活動する。
ファシリテーションスキルを、まずリーダーが活用すると、安心できる場や行動を促進できる場ができます。
これで、安心して相互にモノが言える場になります。
次に、誰かが調子が悪かったり(ミスや体調、業務ペース等)すると支援し合う促しを行います。
これで、お互いを気にかけたり、サポートを行う機運ができます。
さらに、リーダーは目標や目的のみを描いて、本当に必要な時以外はチームに任せるようになります。
こうなると、自分たちで考えて動くようになります。
ファシリテーションは、促進・支援の技術です。
会議の発言一つの促進・支援とも言えます。
そこから始まって、上記の姿はプロジェクトや組織の支援と進化を遂げるということになります。
これが、ファシリテーションの理想型、の一つと考えています。
お気づきになったかもしれませんが、ここまでに至るとリーダーはファシリテーションスキルの活用、というところを脱していて支援の姿勢でモノゴトに当たっていることでしょう。
これは、サーバントリーダーといった姿勢やあり方かもしれません。
カタカナを使わなくても、長老のようにどっしりと後ろで見守っているタイプのリーダーとも言えると考えられます。
ファシリテーションのステップ1ではアイスブレイクを行います。
アイスブレイクと言うと、ゲーム的なものを思い浮かべるでしょうか。
会議の手始めとしてのアイスブレイク、ファシリテーターとしてはどのようなものを選べばよいでしょうか。
これが正解、と言ったものはなく、場の目的やなっていたい状態、ファシリテーターの感性で選ぶのが良いでしょう。
ポピュラーなのは、「チェックイン」です。
場への参加表明となります。参加者が何を感じて場に臨んでいるかが判ります。
会議に関すること、今の感情、全然関係ないこと、、、場の雰囲気や信頼関係等に応じてテーマを決めれば良いでしょう。
見知らぬ人がいる場合は、「自己紹介」系のアイスブレイクが良いかもしれません。
見知らぬ人も含めて、場に臨む緊張感を取り除きます。
場が固い時は「体感型」のアイスブレイクが良いかもしれません。
「一人じゃんけん」のように、少し笑いを誘う程度のものもあります。
少し動く系統で「統計ライン」を入れてみるのも良いかもしれません。
いずれにしても、いきなり本題に入るよりは場をこなれたものにしたいな、発言しやすい環境、信頼のおける環境にしたいな、といった思いが起こった時にはアイスブレイクを活用してみてください。
「初めての人もいらっしゃるので自己紹介でも、、、」、とか、
慣れた仲間だと「では、チェックインから始めましょうか」と言うのも良いかもしれません。
皆さんのスタイルに合わせて活用下さい。
ファシリテーターは、場の支援と促進を行います。
そして、悩みどころになるのが、ファシリテーターの介入ポイントと介入方法です。
介入方法は、大きくは
① 説明する
② 質問する
③ 投げかける
④ 遮る
例えばこんな感じになります。
① 説明する
Step1 等で、流れやルールのを説明するような場面です。
② 質問する
これが非常によく使われる方法です。
③ 投げかける
質問と似ていますが、介入度の低い方法です。
独白の感じでも良いかもしれません。
④ 遮る
何かが合った際は、最終的には遮ることになります。
遮る程度が低い場合は、例えば質問の前の許可質問がこれにあたります。
場が壊れる、進まないような事態になる場合は、大きく遮る場面もあります。
さて、応用範囲の広いのが「質問」です。
Step2が順調に進み始めると、ファシリテーターは一見行うことが無くなります。
本当は、かなりの観察を行っています。
そして、何かが出来ていない状態、不足や欠けている状態を感知した際は、
質問の形で場に問いかけます。
感知する状態としては、以下のような状態です。
共有
合意
本質への深まり
チーム状態
プロセスの進行
このような状態で欠けているところを感知した時に、質問の形で場に問いかけます。
例えば、
だれか一人がしゃべりすぎている場合
→ 「チーム状態はうまくいっていますか」
ファシリテーターの方の使いやすい質問を使えばよいでしょう
ファシリテーションを行う上で、自分が拠って立つ位置を意識するのが良いでしょう。
今回は、ファシリテーションを行う時の立ち位置、ファシリテーターの立ち位置を考えてみます。
例えば、立ち位置を以下のように定めてみます。
■ : 強く場に働きかける、場の中に入る立ち位置
□ : 他の参加者と同じような位置から場に働きかける、場の周辺にいる立ち位置
△ : 一歩引いた位置から場に働きかける、場の少し外側にいる立ち位置
上記の立ち位置は、各ステップではおおよそ以下のように使い分けます。
第1ステップ 準備
10割■の立ち位置で、場の促進というか発進できるようにします。
第2ステップ 広げる
□と△が半々ずつの立ち位置で、何かの事態が生じると■となります。
場が進行しているならば、必要最小限の働きかけを行うといったイメージです。
第3ステップ まとめる
□と■が半々ずつの立ち位置で、収束を図るような力が加わります。
人に力を加えるというより、プロセスに影響力を与える(介入する)回数が増えると
いったイメージです。
第4ステップ 終了
おおよそ10割■の立ち位置で、場を終了させるようにします。
上記のように、ファシリテーションとはいえ、ほったらかしにするわけではありません。
「場の支援と促進」を行うように立ち位置を自分でコントロールします。
やや蛇足となりますが、立ち位置を応用的に使うと、例えばざっくりと以下のようにも考えられます。
「リーダー」の立ち位置を
引っ張る
みんなの前に出てリーディングを行う(ひっぱる)
結果を考える、目標を示す
(リーダーに求められる能力は多くのものがありますが、リーディングに焦点を当てています)
「コーチ」の立ち位置を
動かす
脇で併走する(目標を指し示し、激励し、方策を示す)
行動を考える
「ファシリテーター」の立ち位置は
見守る
必要であれば後ろから押す(考えさせ、支援する)
起こっている意味を考える、自己責任
例えばこんな感じに思われます。
ファシリテーターは、自在に立場を変えるのでリーダーやコーチの立ち位置も時と場合(意味)で使い分けます。また、メンターとの比較を行うのも良いでしょう。
今のリーダーは引っ張るだけではなく多くのことを期待されています。コーチングのスキルを身につけたリーダー、ファシリテーター型リーダーといった表現もされています。
今リーダーに求められているスキルは一旦置いておいて、いわゆるリーディング(ひっぱる)という事柄に対して考えます。
そうすると、ファシリテーターの立ち位置は見守ることを基本として、中にも入るような自在な立ち位置をとる役割と言えます。
今回は、ファシリテーションプロセスにおける立ち位置を解説してみました。
ファシリテーションの4番目のステップは「終わる」の追加説明です。
ファシリテーション(もしくは何か行った)最後には、皆さんからの『振り返り』を行う『分かち合い』のステップを入れると良いです。
○概要
会議の後で、参加者にこの場を振り返って感じたことをコメントしてもらいます。
○ポイント
ファシリテーター
1.感じたことが言いやすい場(サークルの形になる等)を創ります。
2.内容ではなく、プロセスや感じたことを振り返ってもらうようにします。
3.発言順は自由意志に任せます。(発言しないようだと、多少促しを行います。)
4.言いっぱなしの状況・場をつくるようにサポートします。
書記
1.記録の必然性があれば、板書を行います。
メンバー
1.内容ではなく、その場を終えて感じたこと、今感じていること、
言い足りなかったこと、流れ(プロセスについて)等について思うところを
コメントします
2.他人のコメントに口ははさみません
タイムキーパー
1.役割はありません。
もしも必要性があれば、ファシリテーターの要請に応じて時間の報告を行います
○コメント
前までのステップとはうってかわって、内容には一切触れずにそのほかのことを聞きます。
積み残しや感情、流れ(プロセス)について思うところを「言いっぱなし」します。
言いっぱなしても、皆さんが聞いているには違いがないので、それぞれの胸に去来するものがあります。
来ないかもしれませんが、来るとすれば
「この人はこう感じた」
「次はこのように気をつけよう」
「自分の気付きが深まった」等々、様々な気付きがあると思います。
こういった時間を持つと、思った以上に自分の気付きが深まり、チームワークも出てきます。
一言で言うと、チェックアウトを行っています。
ぜひお試し下さい。