オーセンティックリーダーシップ

「オーセンティックリーダーシップ」というリーダーシップ論があります。
(Authentic Leadership)

オーセンティックは、日本語では「 本物の、真性の、正統な、本格的な」という意味となります。

直訳すると、「本物のリーダーシップ」となります。

そして、その意味するところは、

ありのままの自分、自分らしさを活かして自分なりの価値観を原動力とするリーダーシップとなります。

オーセンティックリーダーシップの定義は、多数の研究者によってなされています。
有名なものとしては、世界有数の医療機器メーカー米メドトロニックの前会長兼CEOである William W. George(ビル・ジョージ)(現 ハーバード・ビジネス・スクール教授)の著書『ミッション・リーダーシップ』になります。
この著書において、エンロンの不正会計の例を引いて、CEOには倫理観や道徳観が大切であると述べています。

この「本物」を何と考えるかによって様々な表現がされていますが、一貫しているのは

自己を知り、受け入れて、自己に対して忠実である点です。

つまり、まず自分の中に問う姿勢を大切にしています。

ビル・ジョージの手になるオーセンティックリーダーシップに必要な5つの特性があります。

・自らの目的をしっかり理解している
・しっかりした価値観に基づいて行動する
・真心を込めてリードする
・しっかりした人間関係を築く
・しっかり自己を律する
  (グロービスMBAリーダーシップ)

自分自身、自分らしさを探求し、周りと関わっていくことを大切にしています。

2021年8月9日 | カテゴリー : 基礎知識 | 投稿者 : hiko

インビジブルリーダーシップ

リーダーシップ論には、様々なものがあります。

ドラッカーは、次のように述べています。

「リーダーシップとは、組織の使命を考え抜き、それを目に見える形で明確に確立することである。リーダーとは目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する者である」
 (プロフェッショナルの条件)

ここで、ドラッカーの思想的な源流となるメアリー・パーカー・フォレットによるリーダーシップを見てみましょう。

「リーダーとフォロワーは共に目に見えないリーダー(the invisible leader)、つまり共通の目的に従うのである。最高のリーダーはグループの前にこの共通の目的をはっきり示す。」(管理の予言者)

フォレットの他の言も補足してまとめると、

「共通目的をはっきりと示し、自発的に行動するよう支援する」

これがフォレットの考えるリーダーシップとなります。

共通目的をはっきりと示すことで、共通目的そのものがインビジブルリーダー(目に見えないリーダー)となり人としてのリーダーがいちいち何かを言わなくても自発的に動くようになることを示しています。
リーダーとしての大切な行動は、共通目的をはっきり示すことなのですが、当然ながらフォロワーが十分に理解し動けるような状況を作り出すことが大切になります。

フォレットは、和暦にすると大正の後期から昭和初期に活躍した人で、ドラッカーとは著作、講演録によるつながりとなります。
先見の明と表現しても足りない聡明な方のようです。

フォレットの主張するリーダーシップを発揮するための、資質などにも触れています。
管理の予言者、ひもといてみると得るところが多くあります。

私は、フォレットのこのリーダーシップの定義が非常にシンプルで腑に落ちるところだと考えています。

現在、リーダーシップについて色々とまとめているところです。
数多くのリーダーシップについての考え方が世の中に出ており、それぞれに良さがあります。

いくつかのリーダーシップについても、ここで簡単に解説していきます。

2021年8月6日 | カテゴリー : 基礎知識 | 投稿者 : hiko

コモングッド

コモングッド(common good)という言葉を聞いたことはありますか?

共通善  もしくは 公益 とも訳されるものです。

多くの人が「よい」と考えたものですね。

共通善の考えは、野中郁次郎 一橋大学名誉教授 が有名です。

書籍の「知識創造企業」や「ワイズカンパニー」など、数多くの書籍などで、知識創造の基本・判断基準にあるものが「共通善」としています。

野中教授は知識を単純な情報とは考えずに、実際に使う知識「実践知」が重要であり、実践知の判断基準となるものがこの共通善としています。
この実践知、古くはアリストテレスの「フロネシス」のことを指しています。

スキルやフレームワークなどを解説するだけではなく、職場での活用を自ら考え活動することは、やはり大切ですね。

まさに実践の上での知恵、情報や理屈だけではなく実践知が身にしみるのだと考えます。

さてコモングッドですが、「社会全体にとってよいこと」とも表現できると思います。

では何がコモングッドか、と言われると実はなかなか難しくなります。
時代や文化、組織などによっても変わってくることでしょう。

実際問題として扱う場合は、「共通性を持つどの程度の広がり」で考えるかである程度は語ることができるかもしれません。

例えば「人権」などです。

国連グローバル・コンパクトという取組があります。

企業の人権や労働などに関する取組を取り決めたものです。

このような取組、宣言はコモングッドであると言えるかもしれません。

ちなみに野中教授は、どのようなものがコモングッドであるかは、あまり述べてはいません。
「みんなにとって善いこと」のようなまとめとして、参画する人たちで考えるのが良いとしているようです。

日本では、コモングッドも共通善、そして公益もなかなか抽象度が高く腑に落ちないように感じます。

時代劇のような言葉になりますが、「天下」のため、「天下太平」のため、「世間」のため、がコモングッドに近い印象を持ちます。

アメリカでは、コモングッドは「政府 ガバメント」を指すという、割り切り方もあるということのようです。

コモングッド、和訳して共通善としたところで、なかなか捉えどころが難しいようですが、倫理道徳的な考え方や感じ方にとって大切になるでしょう。
自分自身の「善」に対する感じ方を振り返ってみるのも良いかもしれません。

2021年8月4日 | カテゴリー : 基礎知識 | 投稿者 : hiko

AI:アプリシエイティブインクワイアリ

AIは、人財や組織開発の分野では「アプリシエイティブインクワイアリ」の略称で有名です。
  (AI:Appreciative Inquiry)

組織の真の価値、核になる良さを自分たちで探して見つけて未来をに向けて行動する活動手法です。

活動は、部門横断となることも多く、組織開発手法としても多く使われています。

弊社でも15年以上活用しています。

この方法は、肯定的な質問を行うことで組織の真の価値を発見して、可能性を広げる方法です。

提唱は、1987年にデービッド・クーパーライダー、ケースウェスタン大学教授、そしてダイアナ・ホイットニーらによって行われ、英国航空やNASA、ボーイング等に導入がされています。

ネーミングの通り、価値を認識して探求する方法であり、未来志向(ビジョンアプローチ)の方法と言えるでしょう。

問題点を問題点として把握し解決する問題解決志向(ギャップアプローチ)ではありません。
問題点は認識しておいて、そのゴールとなる未来を目指して問題そのものも解決しようとする方法です。

AIの大まかなプロセスは4段階となります。
頭文字をとって、4Dサイクルという呼び方をします。

ディスカバリー(発見) ← テーマの選択(アファーマティブトピック選択)
  ↓
ドリーム(夢)
  ↓
デザイン(設計・構成)
  ↓
ディステニー(運命、実施と対応)

この4サイクルを循環させてゆきます。
ディスティニーは、現場での継続的な行動や活動になります。

さて非常に有用なAIですが、ドリームからデザインまで、通常おおよそ4日かかります。これは、長いようで真の価値、強みを見つけて夢に合意した後で計画を立てる、AIのフルコースとしては必要な日数でしょう。

組織の真の価値や強みが見つかり参加者が共有できるのであれば、4日はかかりますが、非常に効果の高いプロセスだと考えられます。

問題が発生し、解決への組織力アップを依頼されることも多いです。
どうも問題点を問題点とだけ捉えると、問題にばかり焦点が当たって視野が狭くなり、問題への言い訳や他人のせいにすることも多くなり、やる気も低下するきらいがあります。

AIのアプローチでは、問題は十分に踏まえますが未来の様子(ビジョンでもゴールでもドリームでも結構です)と強みを意識します。そうすると、気がつかなかった方策や再認識した強みをもとに、高まったやる気で行動ができます。

未来を創造する手法、フルバージョンや短縮版など用途目的に応じて様々な研修で活用しています。

2021年8月2日 | カテゴリー : 基礎知識 | 投稿者 : hiko

評伝 中江藤樹

評伝 中江藤樹近年、CSRやESG投資そしてSDGsなど、社会的貢献を念頭においたビジネスが求められています。

さらに最近では、持続可能性(サスティナビリティ)に着目した商品やサービス、そして経営にも注目が集まっています。

ここで重要になるのが倫理観です。

倫理的な商売で有名なのが近江商人です。
「三方よし」のビジネスを行っていました。

「売り手よし、買い手良し、世間よし」という言葉は聞いたことがあると思います。

伊藤忠商事の企業理念としても有名です。

このような道徳的な商売・ビジネスを行う商人は「儒商」とも呼ばれます。

儒商ともなるような道徳観を近江商人の多くは、京都で学んだのではないかとされています。
それは、江戸初期の京都、淵岡山(ふちこうざん)の私塾においてです。

淵岡山が師事していたのが、今回ご紹介する 中江藤樹 です。

中江藤樹(なかえとうじゅ)

1608年(慶長13年)~1648年(慶安元年) (40才没)

近江国西高島郡小川村の生まれ、現在の滋賀県高島市です。

関ヶ原の戦いが1600年
江戸開府が1603年
大阪夏の陣が1615年

まだ戦国時代もさめやらない江戸の初期に生まれ、活躍しました。

中江藤樹は農家の生まれでしたが武士の祖父の養子となり、幼いころから才を発揮し学問に励み、米子(鳥取県)から大洲(愛媛県)に祖父と共に移り住みました。

二七歳の時、高島に独り住まいする母への思いから、大洲藩を脱藩し高島に帰郷します。
脱藩は重罪ではありますが、結果として特段の罪に問われず高島での生活が始まります。

二七歳から病没する四〇歳まで、はじめは小さな酒屋を営み暮らし、徐々に門人が増えていきました。

中江藤樹の学びは、大洲藩にいる頃からを遡ると次のようになります。

大学・朱子学
易経
孝経
論語
陽明学

この変遷を経て得たのが

致良知 (ちりょうち) です。

これは、「心の本体である良知を信じること」 ということです。

良知を信じることができれば、考えや行動が良知に基づくものとなり、自然と倫理的な行動となるということです。

では良知を信じていないで倫理的な行動をしようとすると、どのような手段が考えられるでしょうか?

それは、ルール、法律などの外側からの制約です。

中江藤樹が悟ったのは、外的規範を重視する生き方が間違いで、誰もが生まれつき持っている本心を信じるということです。

現代においても、いきなりルール無しという世の中は考えられません。
すぐに悪い影響が拡大してしまうでしょう。
しかし、ルールを細かく決めても倫理的な考え方や行動ができていないと、いくらルールを作りルールを厳格に適用しようとしても抜け道ばかりができてしまうイタチごっことなってしまします。

迂遠なようではありますが、倫理的な考えを多くの方特に経営層や実務リーダーが持つことが、より善い仕事を通したより善い世の中への近道と考えられます。

では、「致良知」となるためにはどの様にすればよいか。

中江藤樹が勧めていたのは、「五事をただす」ことからです。

それは、「視・聴・言・動・思」です。

書経の「貌・言・視・聴・思」とはちょっと違います。

中江藤樹の五事をただすについては、また別の機会に譲りましょう。

また、中江藤樹が伝えていたのは五事だけではありません。
一般庶民や女性向けに読みやすくした本を作ったり、陽明学などの書物に基づいた講義を行っていました。
古典としては、大学や孝経から触れるのもよいかもしれません。

ちなみに、中江藤樹に学んだ人が日本全国で陽明学、と言うより藤樹学を伝え、庶民向けの本「翁問答」がベストセラーになるといった様々なことがあり陽明学は日本の常識として浸透していったようです。

日本の陽明学の開祖、中江藤樹に興味を持っていただけたらうれしいです。

中江藤樹を知るための本は、色々出ています。

私は、この三五館の林田明大氏の本がよかったです。
この記事も多くがこの書によります。
林田氏の本では、「真説陽明学入門」もよいですね。

ご参考となればうれしいです。

2021年7月30日 | カテゴリー : 基礎知識 | 投稿者 : hiko

社会における企業/メアリー・パーカー・フォレット 管理の予言者

管理の予言者「企業は社会の公器」との言葉は、松下幸之助やドラッカーが述べています。

また、商売が売り手と買い手だけでは無いという考え方は「三方よし」に顕れている近江商人から続く考え方です。

企業は社会の中でどのような存在であるのか?

この問いをひもとくために、ドラッカーに立ち戻ってみましょう。

マネジメントという領域はドラッカーが、創始したと言っても過言ではありません。
マネジメントにおける知の巨人です。

では、ドラッカーがマネジメントに最初に取り組む際、参考にしたものは何なのでしょうか?

それが、ご紹介する「メアリー・パーカー・フォレット」です。

ドラッカーは注目する経営学者として3人を挙げています。そのうちの一人がフォレットです。
ドラッカーがマネジメントに取り組む際、非常に影響を受けた人となります。

メアリー・パーカー・フォレット

1868年(明治元年)~1933年(昭和8年)

ドラッカーは、フォレットの死後となる1950年代にマネジメントを志し、彼女の論文・著作をひもといたということです。

今回ご紹介する本は、

「M・P・フォレット 管理の予言者」です。

ドラッカーが序説を書き、その序説の標題がそのまま書名となりました。

フォレットの主張は、数多く示唆に富むものがあります。

ここでは、社会における企業に着目します。

本書の第11章「社会におけるビジネス」は、1925年(大正14年)11月のフォレットの講演を元にしています。

そこでは、

企業は人のためになる(altruism:利他主義)活動そのものが社会に対する奉仕(Service)である、

と説いています。

企業活動は金儲けだけではない。
企業活動とは別に社会に向けた活動を行う、ということでも無い。

社会の中に企業があり、企業は社会の機能の一つであり、企業は社会の機能・責任を果たす、

といったことを説いています。

フォレットの論じたことは、この本で概観できるかもしれません。
和訳については何冊かがなされていますが、創造性や社会国家に向けた内容など、本の表題や章立てのテーマからは身近に感じることができないところにも、ビジネスや個人の成長、組織のありかた、など示唆に富むところが数多くあります。
例えば、コンフリクトは相反すべき物では無く統合すべき物である、といったことなどです。

脱線しますが、二宮尊徳の一円観、善悪、禍福などのひとつの円に入れて考える、つまりは統合することにも通じています。

この本をきっかけにして、フォレットの説、その世界に触れてみてはいかがでしょうか。

2021年7月11日 | カテゴリー : 基礎知識 | 投稿者 : hiko

三方よし

「三方よし」という言葉、聞いたことがあるかもしれません。

「売り手よし、買い手よし、世間よし」と言われ、近江商人の活動の理念を表しているものです。

この言葉の原点は、江戸中期の近江商人である中村治兵衛が1754年(宝暦4年)70歳の時に、家業を15歳の孫に託すため書き残した家訓「宗次郎幼主書置」によると言われています。

そこには、「自分のことよりもまずお客様のためを思って計らい、謙虚に身を処し、そこにいる人々のことを大切に思って商売をしなければならない」と記されています。(書置第8条から)

自分は謙虚に処し   売り手よし
お客様のため     買い手よし
人々を大切に     世間よし

まさに現在に伝わる「三方よし」です。

さて、近江とは現在の滋賀県は琵琶湖のあたりとなります。
近江商人の中村治兵衛は、現在の滋賀県東近江市五個荘町、琵琶湖東岸の近江八幡市の東の生まれでした。
近江商人とは、戦国時代後期織田信長治世の安土城下の「楽市楽座」が発祥ともされています。
そして、地域によって活躍しはじめた時代に違いがあります。

それは、次のとおりです。
高島商人 戦国末期から活躍(1600年頃~)
      現琵琶湖北西岸の高島市近辺

八幡商人 江戸初期から活躍(1603年頃~)
      現琵琶湖南東岸の近江八幡市近辺

日野商人 江戸中期から活躍(1700年頃~)
      近江八幡の南東の現滋賀県日野町近辺

湖東商人 江戸後期から活躍(1750年頃~)
      琵琶湖東岸の現彦根市の南西、滋賀県豊郷町近辺

近江商人の三方よしは、企業の社会的責任(CSR)が重要視されてきている現代において、日本では江戸時代から受け継がれてきている考え方が見直されていることにもなってきています。

では、このような倫理・道徳的な経営はどのように醸成されたのでしょうか。

一つのヒントは、中江藤樹にあるでしょう。

中江藤樹(1608~48)、江戸時代初期の陽明学者です。
近江聖人とたたえられ、出生の現高島市近辺では、藤樹に学んだ人たちが道徳的に生活していたことが伝えられています。

中江藤樹(先生)が日本で説き始めた陽明学は、二宮尊徳や山田方谷、吉田松陰、西郷隆盛、高杉晋作にも連なる行動学でもあり、道徳的に考え生きる軸となります。

企業の社会的責任(CSR)は、三方よし、そして中江藤樹にその源流を訪ねても良いかもしれません。

中江藤樹の教えは、地元の近江商人や門人によって広まり、伊勢や岡山、熊本などで発展し、幕末そして現代までに連なることになります。

過去のブログで、中江藤樹にも触れていますが、また掘り起こしてみましょう。
高島市には、藤樹ゆかりの藤樹書院、そして藤樹神社があります。

また訪ねたくなりました。

2021年7月5日 | カテゴリー : 基礎知識 | 投稿者 : hiko

二宮尊徳と個性

二宮尊徳、お名前は耳にしたことがあると思います。

江戸後期の小田原藩、酒匂川の下流である現在の小田原市栢山(かやま)で生まれました。

二宮金治郎(通称)の銅像は、幼い頃小学校や中学校で見かけたことがあるかもしれません。
薪を背負って本を読んでいる、勤勉の像を憶えているのではないでしょうか。

二宮尊徳は、農家の出自で後年には幕臣にまでなりました。
その功績は、一言にすると「経済復興」です。
小田原藩という御家の再興を手がけたことが大きなきっかけとなり、小田原藩の経済、つまり
農民の労働と生産の結果である年貢を増やし、藩の経営を安定させました。

小田原藩では、荒れて年貢の取れない農地、そして農民の心を変え農産物を豊かにし、
年貢をきちんと納めることから力を入れています。

この小田原藩の復興に見られる方法は、「報徳」という考え方に基づいています。

小田原藩の復興が成った時、尊徳は時の小田原藩主大久保忠真からどのようなやり方を
行ったのか尋ねられました。

尊徳は、「荒れ地には荒れ地の力があります。荒れ地は荒れ地の力で起こしました。
人もそれぞれ良さや、取り柄があります。それを活かして村を興しました。」と答えました。

これを受けて殿様が、「そのやり方は論語にある『徳を以て徳に報いる』ということ」と
感想を述べたそうです。ここから、尊徳は「報徳」という考え方で自分の実践を形作るこ
とになります。

尊徳は、物や人に備わる良さ、取り柄、持ち味のことを「徳」と名付け、これを活かして
社会に役立てていくことを「報徳」と呼んでいます。尊徳は、あらゆるものに徳があると
考えています。これを「万象具徳」(ばんしょうぐとく)と言います。

最後に、万象具徳の詩(作:小田原報徳博物館 元館長 佐々井典比古氏)をご紹介します。

どんなものにも よさがある
どんなひとにも よさがある
よさがそれぞれ みなちがう
よさがいっぱい かくれてる
どこかとりえが あるものだ
もののとりえを ひきだそう
ひとのとりえを そだてよう
じぶんのとりえを ささげよう
とりえとりえが むすばれて
このよはたのしい ふえせかい

(「ふえせかい」とは、限りあるものから限りないものが生まれる世界の意)

弊社は、「役を立てる」というコンセプトで活動しています。
この「役」と、二宮尊徳の「徳」は、ほぼ同じようにも思えています。

2021年6月29日 | カテゴリー : 基礎知識 | 投稿者 : hiko

ハラスメント(07)大人のいじめ

今日、クローズアップ現代+で、「大人のいじめ」を特集していました。

神戸の小学校の件や介護の現場でもいじめは頻発していると報道されています。

多忙が一つの要因とされており、多忙によるストレスからいじめが多発しやすいということでした。

確かに多忙は重要な一つの要因だと考えられます。番組の終盤で正社員の店長とアルバイトのスタッフ達でたくさんの業務の押し付け合いもあるというコメントがされていました。

そして、業務量が過多の場合も含めた対策としては、まず窓口に相談、というものでした。

間違いではなく、緊急避難として、対処療法としては正しい対策でしょう。

大切なのは、その後緊急避難以外の根本に迫る対策ができるかというところにかかっています。

業務量も含めて、心に余裕を持てる状況ができないといじめが多発する状況は改善しないと考えられます。

では業務量を単純に減らせば良いか、どうかは、当事者の方々の知恵が必要なところとなります。
ハラスメントが起こる状況の問題の根っこの探究ですね。
軽々と問題の根っこはこれです、とはなりません。

もう1点、多忙な状況でいじめをする人もいれば、しない人もいます。
元気を無くしていく人もいれば、そこそこ元気な人もいます。

多分、多忙なのはいじめの起こるきっかけで、いじめを行ってしまったところに焦点を当てるのが良いと考えられます。

いじめを起こさないという「してはならない」は踏まえておいて、「望ましい職場」のあり方を共に思い描いて浸透させて、いじめが起こりにくくなる方が良いアプローチだと考えます。
ビジョンアプローチです。

望ましい職場、どのようなものでしょうか。
自分たちで見いだして、言葉にしないとあまり意味がありませんが、お互いの「尊重」は大切でしょう。

もしも「尊重」などの望ましい状況における考え方と、「尊重」に沿った行動様式を皆ですり合わせていけたならば、組織としてはハラスメントが起こりにくくなるでしょう。
このような活動は、その組織の多くの人が携わると考えられるので、コトを進めるにはパワーも必要でやり方に工夫も必要となるでしょう。 

このように、環境を変化させてでハラスメントが起こりにくくする外側からのアプローチ方法がありますが、これだけでは難しい場合もあります。

それは、いじめる側の「悪意」と「心の傷」です。

「心の傷」は、例えば小さな頃いじめられた経験のある人は、されたことをしてしまう、いじめてしまうことがあります。
この場合は、本格的にはカウンセリングの領域になってしまいます。
「悪意」も「心の傷」も、望ましい行動様式へと組織が変わってくると、多少は軽減される可能性もあるでしょう。
いじめる人の心や行動へのこだわりが見えるとさらに別の対応ができるでしょう。

いじめ、ハラスメントは大なり小なり人権侵害と考えられます。

神戸のような状況になったら、処罰や懲戒、いじめを受けた人は避難も重要です。
しかしこれだけでは、職場の風土や関わりはそのままかもしれません。

起こらなくするような衆知を集めることと、多くの人がセルフコントロールができれば、いじめられることも、いじめることも少なくなってくるでしょう。

2020年1月29日 | カテゴリー : 基礎知識 | 投稿者 : hiko

古典の力(54)味方を増やす

古典の力、日本や中国の古典からチームや組織の力を高める言葉に焦点を当てています。

 

第五四弾、易経から

君子は其の身を安くして後動き、其の心を易くして後語り、其の交わりを定めて後求む。

 

優秀なリーダー(君子)の3条件、味方を増やす3条件です。

 

1.自分の身を安全にしてから動く

2.心を落ち着かせ良く考えてから、判りやすい言葉で語る

3.誠意あるやりとり(交流)ができてから、自分のして欲しいことを求める

 

今でも十分に通じる話ですね。

 

易経で、これに続く話は、なぜかというところです。
この時代のリーダーは、戦争や領主としての民や兵の統率・リーダーシップが語られています。
その色合いもあり、、、、

 

・リーダーの身が危ういままだと誰も味方しない
・心が落ち着かず、相手を恐れたり疑ったりして話すと相手は応えない
・心の交流なしに相手に要求しても相手は応えない

 

こう続きます。

言い換えると

 

・無謀、危険過ぎると誰もついて行けない
・感情にまかせる、疑いすぎる、思いつき、判らない言動では相手が応えられない
・信頼の構築無しに要望・命令しても、相手は思った行動や応答をしない

 

こんなところです。

リーダーとしては、自分に共鳴して動いてもらえる味方が一人でも多い方が目的・目標に近づきます。

2020年1月15日 | カテゴリー : 基礎知識 | 投稿者 : hiko